送迎は、一法人で抱えない。
送迎は自前の車と自前の運転手で回すのがデイの強み。この常識は、来年度の介護報酬改定を前に手放したほうがいいと私は考えています。
理由は、厚生労働省が10月14日の第270回社会保障審議会介護給付費分科会で、ほかの事業所と組んで送る「共同送迎」の同乗範囲を子どもの通園・通学や買い物支援にまで広げる案を出したからです。同じ日には、迎えに行って空振りした日の減算を外す案も並びました。年末に大枠が固まる前に、理事長が決めておきたいことを書きます。
迎えに行って空振りでも、片道47単位を引かれている
いまの通所介護は送迎の費用を基本報酬に含めているため、事業所が送迎しなかった日は「送迎減算」として片道につき47単位が引かれます。
厄介なのは、迎えに行ったのに空振りした日です。分科会の資料1(通所介護)は、利用者の家まで迎えに行ったものの、利用者の都合で家族が事業所まで送ってきた場合も減算の対象になっていると書いています。運転手の人件費もガソリン代も普段どおりかかっているのに、報酬は減る。理不尽な話です。資料自身が「経営に負担が生じている」と認めました。
どれくらいの事業所が当てはまるのか。同じ資料に載っている算定状況(令和7年11月審査分)では、送迎減算を請求した通所介護事業所の割合が79.3%でした。8割近い事業所が、どこかで減算を出しているわけです。
減算の理由も調べられています。令和8年度の老人保健健康増進等事業の速報値(n=1,237、複数回答)で一番多いのは「いつも利用者家族が送迎を行う」の66.5%。次が「利用者・家族都合による突発的な送迎のキャンセル」で58.4%でした。半分を超える事業所が、急な空振りを減算の理由に挙げています。
そこで出てきたのが、居宅まで迎えに行った際に起きるような突発的なキャンセルを、例外として送迎減算の対象から外す案です。通所リハビリテーションも同じ方向で検討するとしています。
ただし、どこまでを「突発的」とみなすのかは決まっていません。介護ニュースJointによると、分科会では基準の明確化を求める委員もいました。新しい単位数や細かな要件も、現時点では要確認です。
もう一つあります。減算が外れても、運転手が足りないという問題は何も変わりません。
共同送迎は、子どもの通園や買い物支援まで広がる
共同送迎そのものは新しい話ではありません。2024年度の介護報酬改定で通所系サービスの扱いはすでに明確にされていて、いまでも雇用契約や業務委託契約で責任の所在をはっきりさせれば、ほかの介護事業所や障害福祉サービス事業所の利用者を同じ車に乗せられます。
今回の案は、その範囲を広げるものです。前提は、これまでの共同送迎と同じく契約で責任をはっきりさせること。そのうえで資料1は、児童の通園・通学や地域の買い物支援などとの同乗も認める方向を示しました。Joint の報道では、会合で賛同の声が上がりました。一方で責任や費用負担、安全管理、職員体制の一層の明確化を求める意見も出ています。
ショートステイも同じ流れです。資料4(短期入所)は、通所系の扱いを踏まえて短期入所生活介護でも共同送迎や共同委託を明確化する案を出しました。いま片道184単位の送迎加算を、コストの実態に応じて見直す案も一緒です。
背景には、交通の側の動きもあります。資料1には、医療・福祉施設の送迎を含めた「地域の輸送資源のフル活用」を進める改正地域公共交通活性化再生法が6月に成立し、10月16日に施行される予定だと書かれていました。
介護の報酬と地域の交通が、同じ方向を向き始めています。
送迎車をもう1台買う計画に、私は賛成しない
資料1には、送迎の現場をこう書いた一文があります。都市部では近隣事業所との送迎職員の取り合いが起きかねず、燃料費や車両の経費も大きい。名古屋で事務を預かっているデイでも、運転手の求人を出して反応がないまま季節が変わる、という話は珍しくありません。
経営の数字も厳しい。東京商工リサーチの調査を伝えたJoint の記事によると、2026年1〜9月のデイサービス事業者の倒産は47件。前年同期より34.2%増え、昨年1年間の45件を9月までで超えました(集計対象は通所・短期入所介護事業で負債1,000万円以上)。原因の最多は「売上不振」の37件です。
この状況で、送迎のために車を買い足し、運転手を一人増やす。私は勧めません。自前の送迎網は、運転手が一人辞めただけで朝の便が組めなくなります。私が理事長にすすめているのは、車を増やすより、近所と組む契約書を1枚作るほうです。
案はまだ案です。それでも通ってから動き出す事業所と、いまから準備している事業所の差は、来年の春にははっきり出るはずです。
年末の大枠が出る前に、理事長が決めておくことは3つ
迎えの空振りを、日付と理由で残す
キャンセル除外の基準が決まったとき、自分の事業所で何回分が戻るのかを試算できるのは、記録がある事業所だけです。記録がなければ、取り戻す話すらできません。来月から、空振りした日付・利用者・理由を1行ずつ残してください。送迎のキャンセル料は、いまでも利用者への説明や同意書による確認があれば受け取れると資料1に書かれています。重要事項説明書のキャンセル料の項目が、送迎の空振りまで想定した書き方になっているかも、あわせて見直しておきたいところです。
同じ方面に車を出している相手を、地図の上で数える
近くのデイ、障害福祉の事業所、同じ法人のショート。朝と夕方に同じ道を走っている車は、思っているより多いものです。組めそうな相手を3つ書き出す。声をかけるのは、大枠が見えてからでも間に合います。
契約と運行記録の型を、先に作っておく
共同送迎の前提は、契約で責任をはっきりさせることです。誰の車で、誰が運転し、事故が起きたら誰が責任を負うのか。費用をどう分けるのか。ここを書いた雛形を、法人として1つ持っておきます。乗せた人と時刻の運行記録も、相手と共有できる形にしておくと話が早い。うちが無料で公開している車両管理アプリも、こうした送迎車の記録を一か所にまとめるために作りました。
3つとも、案が通らなかったとしても無駄になりません。空振りの記録はキャンセル料の説明に使えますし、契約の雛形は送迎の外部委託を考えるときにもそのまま役に立ちます。
あなたのデイで先月、迎えに行って空振りした回数を、すぐ答えられる人はいますか。
出典・参考情報
- 第270回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料(厚生労働省、確認日:2026年10月18日)
- 資料1 通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護・療養通所介護(厚生労働省、確認日:2026年10月18日)
- 資料4 短期入所生活介護・短期入所療養介護(厚生労働省、確認日:2026年10月18日)
- デイサービスの送迎減算、急なキャンセルを対象外に 厚労省案(介護ニュースJoint、確認日:2026年10月18日)
- デイサービスの共同送迎、対象者を拡大 買い物支援や通園・通学も可に 厚労省案(介護ニュースJoint、確認日:2026年10月18日)
- ショートステイの共同送迎、取り組みやすく 厚労省がルール明確化を提案(介護ニュースJoint、確認日:2026年10月18日)
- デイサービス倒産、1〜9月で過去最多 昨年年間を超える(介護ニュースJoint、確認日:2026年10月18日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度・数値は公表元の最新情報をご確認ください。
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