行動援護 経過措置 3年延長案の2条件【2026】
9月最後の金曜、夕方の岡崎。行動援護の支援から戻ってきたサービス提供責任者のEさんが、まだ車の鍵を握ったまま、施設の玄関先で厚労省の資料を立ち読みしていた。「来年3月で私、要件外れるんですよね」。その一言が、この記事の入口です。
令和8年9月24日の第63回 障害福祉サービス等報酬改定検討チームで、行動援護の資格要件に関する経過措置について、はじめて「延長」の方向性が出ました。ただし、無条件ではありません。
令和9年3月31日で切れる経過措置に、3年延長案が出た
行動援護のサービス提供責任者とヘルパーには、本来の資格要件とは別に「みなし」の経過措置があります。この経過措置の期限が、令和9年3月31日。あと半年です。
9月24日の資料「訪問系サービスに係る報酬・基準について」には、検討の方向性としてこう書かれています。
行動援護のサービス提供責任者及び従業者について、経過措置の終了に向けて、減算措置を設けた上で、令和9年3月31日時点で行動援護事業所の従事者である者に限り、経過措置の延長(3年間)を検討してはどうか。
読み飛ばしてはいけない言葉が2つ入っています。「減算措置を設けた上で」と「従事者である者に限り」。延長されるから安心、という話ではないのです。
延長の条件は2つ。どちらも自動では満たせない
1つめは減算がセットになること。経過措置で配置している人を令和9年4月以降も置き続けるなら、その分の報酬は下がる前提で書かれています。減算率も算定方法も、この資料の段階では示されていません。ここは9月28日以降の検討チームの続報を待つしかない部分です。
2つめは令和9年3月31日時点で行動援護事業所の従事者であること。つまり、期限の日にその事業所で働いている人だけが対象になります。令和9年4月以降に新しく採用した「みなし要件の人」は、この延長には乗れません。
言い換えると、来年4月からの行動援護の人員設計は、来年3月末までにほぼ確定させておかないと打ち直しができない構造になります。うちのクライアントにも、ここを年明けの仕事だと思っている事業所がいくつかあります。年明けでは遅い。
この経過措置、設定から12年が経っている
そもそも、なぜここまで延びてきたのか。経過措置が設けられたのは平成27年度の報酬改定です。行動援護従業者養成研修の修了者であることを要件としつつ、介護福祉士や実務者研修修了者などを修了者とみなす、という措置でした。
その後、平成30年度と令和3年度に延長。令和6年度の改定でも「新たに資格を取得する者を除き」という条件を付けて令和9年3月31日まで延ばしています。そして今回の資料には、こう書かれました。「未だ経過措置対象者が一定数存在しているが、経過措置を設定してから12年が経過している」。
12年。この一文が、今回「減算措置を設けた上で」という条件が付いた理由をそのまま説明しています。国としては、そろそろ本来の要件に戻す気でいる。
該当者はサ責71人、ヘルパー256人
では、実際に何人が影響を受けるのか。令和7年度障害福祉サービス等報酬改定検証調査(行動援護事業所324事業所・人員は常勤と非常勤の実数)の数字が資料に載っています。
- 事業所のサービス提供責任者 924人 → うち行動援護に従事 590人 → うち経過措置該当者 71人(12.0%)
- 事業所の従業者 4,572人 → うち行動援護に従事 1,910人 → うち経過措置該当者 256人(13.4%)
割合で見れば1割強。全体の中では小さく見える数字です。ただ、サービス提供責任者の配置基準は「常勤ヘルパーのうち1名以上」。該当者が1人しかいない事業所なら、その1人が抜けた瞬間に行動援護そのものが回らなくなります。12.0%という数字は、事業所単位では「0か1か」の話になる。
ちなみに行動援護は、令和7年度の費用額が約296億円で、障害福祉サービス等全体の総費用額の0.6%。利用者数と事業所数は令和2年度を除いて毎年度増えています。小さいけれど伸びている領域です。
「期限内に要件を満たせる」は31.5%だけ
同じ調査で、経過措置の該当者がいる事業所に、期限内に本来の従業者要件を満たせるかどうかを聞いています。全体89事業所の回答はこうです。
- 可能 31.5%
- 難しい 25.8%
- わからない 25.8%
「難しい」と「わからない」を足すと51.6%。半分の事業所が、半年後の自分の人員体制を答えられていません。私はこの「わからない25.8%」が一番重いと思っています。難しいと答えた事業所はすでに問題を認識していますが、わからないと答えた事業所は、誰が該当者なのかの棚卸しがまだ終わっていない可能性が高い。
本来の要件は、サービス提供責任者なら「行動援護従業者養成研修課程修了者又は強度行動障害支援者養成研修(実践研修)修了者であって3年以上の直接処遇経験」。研修は申し込んで翌週受けられるものではありません。自治体や実施団体の年間スケジュールに乗る必要があります。
10月にやることは、名簿の突き合わせだけ
この論点に対して事業所側が10月中にできることは、そんなに多くありません。3つに絞りました。
- 該当者の名簿化。今いるサービス提供責任者とヘルパーのうち、「令和3年3月31日時点で介護福祉士・実務者研修修了者・介護職員基礎研修修了者・居宅介護職員初任者研修修了者等であって5年以上(従業者は2年以上)の実務経験」で配置している人が誰なのかを、資格証のコピーまで戻って確認する。名前が出てこないなら、それが上の「わからない25.8%」です
- 研修の実施スケジュール確認。行動援護従業者養成研修と強度行動障害支援者養成研修(実践研修)の、来年度分の募集時期を都道府県の障害福祉課に確認する。定員があるので、3月に動くと間に合いません
- 減算前提での収支シミュレーション。減算率は未確定なので金額は出せませんが、「この人を令和9年4月以降も経過措置で置く場合、報酬が下がる」という前提を来年度予算に入れておく。ここを入れずに人件費だけ積むと、年度途中で計画が破綻します
逆に、今やっても無駄なことがひとつ。減算率の予測です。9月24日時点の資料に数字はありません。検討チームの開催状況を見ると9月28日に第64回が予定されており、今後の回で具体化していく流れです。確定していない数字で会議を重ねるより、名簿を作るほうが先です。
行動援護は、外出時の危険回避や予防的対応という、人でしか代替できない支援です。その担い手の要件が動く年に、名簿が手元にないまま4月を迎えるのが一番きつい。半年あります。今のうちに。
出典・参考情報
- 第63回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(令和8年9月24日)資料(厚生労働省、確認日:2026年9月27日)
- 訪問系サービスに係る報酬・基準について(第63回検討チーム資料)(厚生労働省、確認日:2026年9月27日)
- 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 開催状況(厚生労働省、確認日:2026年9月27日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の詳細や最新の取扱いは、必ず所管の自治体および一次情報でご確認ください。
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