保育所 定員充足率87.7%が示す3点【2026】

87.7%。令和8年4月1日時点の、全国の保育所等の定員充足率です。

利用定員302万人に対して、実際に通っている子どもは265万人。約37万人分の椅子が空いたままになっています。

ところが同じ日の待機児童は2,435人で、前年より181人増えました。空いているのに、足りない。こども家庭庁が公表したばかりの数字を並べていくと、この矛盾はきれいに3つへ割れます。


待機児童の増加181人は、ほぼ東京都ひとつで説明がつく

まず、全体像です。こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)」のポイントはこうなっています。

  • 保育所等利用定員は302万人(前年比1.3万人の減少)
  • 保育所等を利用する児童の数は265万人(前年比3.2万人の減少)
  • 待機児童数は2,435人で前年比181人の増加
  • 待機児童のいる市区町村は前年から22減少して189市区町村
  • 待機児童が100人以上の市区町村は、前年から2増加して3自治体
  • 定員充足率は87.7%(前年比0.7%の減少)

ここで、多くのニュースが「待機児童が増加に転じた」と書きます。その一行だけを見て自園の地域を心配するのは、早い。

同じ資料の都道府県別データ(資料4)を開くと、東京都の待機児童は1,113人。前年は339人でしたから、東京都だけで774人増えています。全国の増加が181人ですから、東京都を差し引いた残り46道府県は1,322人。前年の同じ範囲は1,915人でしたので、593人の減少です(いずれも公表値からの単純な引き算です)。

待機児童のいる市区町村が22も減って189になった、という数字とも符合します。待機児童は全国に薄く広がっているのではなく、少数の自治体へ濃く固まった。この形が令和8年の実像です。


空き37万人分。充足率87.7%が人件費に効く仕組み

経営の側から見て重いのは、待機児童の増減よりも充足率のほうです。

資料3の合計欄には、保育所等数40,046か所、利用定員3,016,417人、利用児童数2,646,756人と載っています。差は369,661人。およそ37万人分の定員が使われていないという意味です。充足率87.7%は前年から0.7ポイント下がりました。

なぜこれが人件費に直結するのか。収入と配置で、根拠になる条文が別だからです。

施設型給付費は、子ども・子育て支援法第27条第1項が「特定教育・保育を受けたとき」に支給すると定めています。同条第3項は「施設型給付費の額は、一月につき」と書く。つまり入ってくるお金は、その月に実際に通った子どもの数で動きます

一方の保育士配置は、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第33条第2項です。乳児おおむね3人につき1人以上、満1歳以上満3歳未満はおおむね6人につき1人以上、満3歳以上満4歳未満はおおむね15人につき1人以上、満4歳以上はおおむね25人につき1人以上。そして「ただし、保育所一につき二人を下ることはできない」。

年齢区分ごとに刻まれているので、たとえば1歳児が2人減っても配置上の必要数は変わらないことがある。定員100人・充足率87.7%なら、12人分の空きです。12人分の給付は消えますが、そのぶん保育士を12人分減らせるわけではありません。ここが効いてきます。

しかも下限が「二人」で固定されているぶん、規模が小さい園ほど空き1人の重さが増す。小規模保育事業所や定員60人以下の保育所で、この夏あたりから収支の手触りが変わったと感じている経営者は、たぶん気のせいではないです。


愛知の待機児童は47人。それでも空きは名古屋の外に寄っている

東海圏の数字も見ておきます。資料4によると、令和8年4月1日時点の待機児童数は愛知県47人(待機児童率0.03%、前年51人から4人減)、三重県73人、岐阜県1人、静岡県0人。愛知は前年より減っています。

問題は、その裏側にある空き定員の偏りです。資料3には「都道府県の数値には指定都市・中核市は含まず」という注記があり、愛知県の欄と名古屋市の欄は別々に並んでいます。

  • 愛知県(名古屋市・中核市を除く):949か所、利用定員96,737人、利用児童数77,991人 → 充足率80.6%
  • 名古屋市:777か所、利用定員53,896人、利用児童数49,459人 → 充足率91.8%

11ポイントの差です。全国平均の87.7%をはさんで、名古屋市は上、県所管エリアは下。中核市を見ても豊橋市9,553人定員に対し7,463人、豊田市は10,900人定員に対し7,537人が通っています。豊田は約69%。

県内で待機児童が出ているのは岡崎市の11人だけで、名古屋市・豊橋市・豊田市・一宮市はいずれも0人です。愛知の保育は、待機の問題からとっくに空きの問題へ移っています。しかもその空きは、市街地の外側から順に厚くなっている。

ここまで読んで自園の位置が気になった人は、次の3つを手元で確かめてください。


9月に入る前に、手元で出しておく3つの数字

やることは多くありません。うちがクライアントの保育所と最初にやるのも、だいたいこの順番です。

1. 年齢区分別の充足率

園全体の充足率だけを見ても、打ち手は出てきません。0歳、1・2歳、3歳、4歳以上に割って、利用定員と在籍を並べる。第33条第2項の配置基準がこの刻みで書かれている以上、収支のねじれもこの刻みで起きます。空いているのが4歳以上なら影響は薄く、1・2歳なら重い。

2. 利用定員と実在籍の乖離

利用定員は動かせない前提の数字ではありません。子ども・子育て支援法第31条第1項は、利用定員を「教育・保育施設の設置者(略)の申請により」「小学校就学前子どもの区分ごとの利用定員を定めて、市町村長が行う」としています。申請の起点は設置者側です。乖離が2年以上続いているなら、市区町村の担当課と話をしておく段階に来ています。

3. 経営情報等の報告と数字を揃える

報告に載せる数字と、園長の手元にある数字が違う。これは本当によくあります。8月末が期限の報告で使った在籍数・定員・人件費を、そのまま来年度の定員判断の土台にしてください。二重管理をやめるだけで、判断のスピードが変わります。

待機児童が減った地域ほど、次に来るのは定員の再設計です。全国で37万人分が空いている以上、これは景気の話ではなく構造の話です。来年の4月1日にまた同じ表を眺めるだけで終わるかどうかは、この秋の動き方で決まります。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度は改正される場合がありますので、実際の判断は必ず最新の一次情報および所管の市区町村へご確認ください。


あわせて読みたい


株式会社Reliefのサービスで、事業運営を強力サポート!

株式会社Reliefは、医療機関や介護・福祉・保育施設の運営をトータルサポートする専門企業です。
業界特化型のオンラインアシスタント「セレナ」
月一回からはじめる事務長アウトソーシング「困ったときのじむちょー君」
バックオフィスの業務改善・効率化、MoneyForwardクラウドICT・クラウドDX導入支援
経営課題の解決や業務効率化を実現し、貴社の発展を全力でサポートいたします。

現場の事務負担を減らす自社開発アプリも無料で公開しています。
PC・ソフトの台帳づくりを自動化するIT資産管理ツール
社用車・送迎車の記録を一元管理する車両管理アプリ
最新情報のお知らせは公式LINEでお届けしています。お気軽にご登録ください。