障害福祉 運営指導の改善報告 放置で進む3段階【2026】

134件。愛知県が令和7年度に共同生活援助へ実施した運営指導の件数です。障害福祉サービス事業所・施設の合計は1,062件、そのうち放課後等デイサービスが216件、就労継続支援B型が138件、共同生活援助が134件でした(愛知県 障害福祉サービス事業者等の指導状況(令和7年度))。

県内のグループホーム経営者にとって、運営指導はもう「いつか来るかもしれないもの」ではありません。そして本当に効いてくるのは、当日ではなく、そのあとの数十日です。

Relief 代表の阪本です。うちが支援に入る法人でも、指導の当日はどこも必死になります。ところが結果通知が届いたあと、改善状況報告書の作成が誰の机の上にも乗らないまま、期日だけが過ぎていく。この落とし方が一番もったいない。


当日に渡される紙は、正式な結果ではありません

名古屋市は運営指導の流れを公開しています。実施予定日の1か月前までに文書で通知が届き、事前調書を提出し、当日は原則3名以内の職員が訪問する。ここまでは多くの事業所が把握しています。

見落とされやすいのはその次です。名古屋市の資料には、当日については「当日の確認内容をまとめたメモをお渡しします。なお、正式な結果は、後日文書により通知します。」と書かれています(名古屋市 運営指導実施の流れ)。

つまり当日の紙はメモです。指摘の全量でも、確定した結論でもない。「当日はそんなに厳しく言われなかったから」という感触で安心してしまうと、後日届く結果通知の中身とのギャップに驚くことになります。

そして同じ資料の5項目めが、実は今日の本題です。


改善状況報告書には、期日が書かれています

名古屋市の資料はこう続きます。「改善を必要とする指摘事項がある場合は、結果通知に記載の期日までに、改善状況報告書等をご提出いただきます。」

期日は結果通知に書かれています。全国一律で30日、といった決まりではありません。だから通知を開封した人が期日を控えていないと、社内の誰も締切を知らない状態が生まれます。うちが関わった案件でも、理事長の机の書類の山から結果通知が出てきたのが期日の3日前、というのを見たことがあります。

ここで押さえておきたいのは、改善状況報告書は「提出したら終わる手続き」ではないという点です。報告書は、指摘された基準不適合を是正したことを行政に示す証拠です。出さない、あるいは中身が伴わないまま出す。どちらの場合も、行政から見れば基準に適合していない状態が続いていることになります。

その状態が続くと、次に動くのは担当者ではなく法律です。


勧告・公表・命令。3つの段は思ったより近い

障害福祉サービスの根拠法は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)です。第49条と第50条に、是正されない事業者に対して何ができるかが並んでいます(e-Gov法令検索 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)。

  1. 勧告:人員基準や設備・運営基準に適合していないと認めるとき、都道府県知事は「期限を定めて」措置をとるべきことを勧告できます(第49条第1項)。
  2. 公表:勧告を受けた事業者がその期限内に従わなかったときは、その旨を公表することができます(第49条第3項)。
  3. 命令:正当な理由がなくて勧告に係る措置をとらなかったときは、期限を定めて命令ができます(第49条第4項)。命令をしたときは、都道府県知事はその旨を公示しなければならないと定められています(第49条第5項)。

公表は「できる」、公示は「しなければならない」。この助動詞の差が現場では重い。命令まで行けば、法人名が世に出ることは行政の裁量ではなく義務になります。

さらに第50条では、指定の取消し、または期間を定めた指定の全部もしくは一部の効力停止が定められています。効力停止は、その期間の給付費が入ってこないという意味です。グループホームで言えば、家賃も人件費も出ていくのに報酬だけが止まる。

ここまでを一気に読むと極端に見えるかもしれません。ただ、入口は「改善状況報告書を出し忘れた」という、ごく事務的な一手なのです。


グループホームは、そもそも指導の作りが違う

共同生活援助には、他のサービスにない事情があります。住居が複数あることです。

名古屋市の資料では、複数の住居がある共同生活援助事業所について「書類の確認は1か所で行います。」とされ、他の住居の書類もまとめて用意するよう求められています。当日は1か所に集約されますが、確認対象は全住居分。世話人の勤務実績も、個別支援計画も、住居ごとにバラバラの管理をしていると、この一点で崩れます。

愛知県はさらに踏み込んでいます。県は、令和7年度より共同生活援助についての運営指導の一部を指定都道府県事務受託法人に委託しており、受託者は一般社団法人 福祉評価推進事業団と公表されています(愛知県 障害福祉サービス事業者等運営指導事前提出資料)。名古屋市も、運営指導に関する一部事務を委託しており、書類の不備・不足について事務受託者から連絡が来る場合があると案内しています。

体制が強化されているということです。国の側も、厚生労働省が「障害福祉分野における運営指導・監査の強化について(令和8年6月)」を掲載し、令和8年6月8日付で指導指針・監査指針・運営指導マニュアル等の関係通知を並べています(厚生労働省 障害福祉分野における指導監督)。

では、明日の朝に何をすればいいのか。


月曜の朝に5分でできる3つの確認

大掛かりな準備は要りません。まず机の上で終わる3つから始めてください。

  1. 直近の結果通知を物理的に探し、期日を口に出して読む。 期日は通知に書かれています。見つからない場合は、通知が届いていないのか、誰かの机で止まっているのかを今日中に切り分ける。
  2. 改善状況報告書の担当者を1人決めて、名前を書く。 「事務で」「みんなで」は担当者がいないのと同じです。管理者とサービス管理責任者のどちらが書くのかを、指導の有無にかかわらず先に決めておく。
  3. 住居ごとの書類の置き場所を一覧にする。 愛知県は事前提出資料を運営指導実施日の10日前までに監査指導室と市町村の障害福祉担当課へ提出するよう案内しています。10日は、住居を回って書類を集め直すには短い。

この3つは、外注できる部分と、経営者本人にしかできない部分がきれいに分かれます。書類の収集と様式づくりは外に出せます。誰が責任を持つかを決めることは、外に出せません。

うちが事務長アウトソーシングでお預かりする法人でも、最初にやるのは新しい仕組みの導入ではなく、この「止まっている紙を動かす」作業です。指導そのものより、指導のあとの数十日のほうが、法人の将来を分ける。134件という数字は、その分岐点に立つ事業所が愛知県内だけで1年に134あった、ということでもあります。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の運用や様式は自治体ごとに異なるため、実際の対応は指定権者の通知内容に従ってください。


あわせて読みたい


株式会社Reliefのサービスで、事業運営を強力サポート!

株式会社Reliefは、医療機関や介護・福祉・保育施設の運営をトータルサポートする専門企業です。
業界特化型のオンラインアシスタント「セレナ」
月一回からはじめる事務長アウトソーシング「困ったときのじむちょー君」
バックオフィスの業務改善・効率化、MoneyForwardクラウドICT・クラウドDX導入支援
経営課題の解決や業務効率化を実現し、貴社の発展を全力でサポートいたします。

現場の事務負担を減らす自社開発アプリも無料で公開しています。
PC・ソフトの台帳づくりを自動化するIT資産管理ツール
社用車・送迎車の記録を一元管理する車両管理アプリ
最新情報のお知らせは公式LINEでお届けしています。お気軽にご登録ください。