愛知県最低賃金1195円 算入できない賃金5つ【2026】

8月最初の週、豊橋市の障害者グループホーム。事務室のPCには給与計算ソフトが開いたままで、事務長のDさんがパート職員の時給欄を上から下へスクロールしています。

1,140。1,150。1,160。去年の秋に一度直した数字が、そのまま並んでいる。

その3日前、名古屋の愛知労働局に1通の答申文が渡っていました。書かれていた額は、時間額1,195円です。


愛知県は1,195円。目安より1円だけ多い

愛知労働局の発表を、そのまま引きます。

「令和8年8月5日、愛知労働局長は、愛知地方最低賃金審議会会長より現行の愛知県最低賃金時間額 1,140円を 55円引上げ、時間額 1,195円(令和8年10月1日効力発生予定)へと改正決定する旨の答申を受けました」(愛知労働局「愛知県最低賃金が10月1日から1,195円に改正予定」

ここで見ておきたいのが「効力発生予定」という書き方です。答申が出た段階であって、確定ではありません。厚生労働省も、目安を示したうえで「各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定」すると書いています。とはいえ、額そのものが答申から動く場面はまず想定しにくい。事務としては1,195円で組んでおくのが現実的です。

7月28日の第75回中央最低賃金審議会が示した目安は「Aランク54円、Bランク56円、Cランク56円」でした。愛知はAランクで、埼玉・千葉・東京・神奈川・大阪と同じ枠です。目安が54円、答申が55円。1円だけ上に出ています(台帳の値どうしを引いた試算です)。

東海圏の他県はBランクで、目安は56円。岐阜、静岡、三重はここに入ります。愛知に本部を置きながら三重や岐阜にも事業所を持つ法人なら、県ごとに別の額を見に行く必要があります。

ちなみに、目安どおりに全国で引き上げが行われた場合の全国加重平均は1,176円。愛知の1,195円は、それより19円高い水準です。


「1,195円は払っている」の計算が、たいてい合っていない

問題は、そのあとの計算です。

たとえば、時給1,150円のパート職員に通勤手当が1日400円、精皆勤手当が月3,000円ついているとします。合計すれば1,195円を超える。だから大丈夫。この計算が、法令上は通りません。

最低賃金法第4条第3項には「次に掲げる賃金は、前二項に規定する賃金に算入しない」とあります。愛知労働局は、この算入されない賃金を5つに整理しています。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
  • 時間外労働・休日労働に対する賃金
  • 深夜労働に対する割増賃金
  • 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

医療・介護・福祉・保育の給与テーブルで、この5番目に引っかかる法人が多い。通勤手当は事業所が郊外にあるほど厚くなりますし、精皆勤手当はシフトを埋めてもらうための定番です。家族手当を残している法人も、まだあります。

どれも職員のために付けた手当なのに、最低賃金の計算には1円も乗らない。夜勤の深夜割増も同じで、こちらは介護・障害者グループホーム・訪問看護に直撃します。

そして、これは努力目標ではありません。最低賃金法第4条第1項は「使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない」。第40条には、違反したときは「五十万円以下の罰金に処する」と書かれています。


派遣看護師と月給の主任は、見る場所が違う

適用範囲も一度整理しておきます。愛知労働局は、最低賃金が「常用・臨時・派遣・外国人技能実習生・パート・アルバイト、年金受給者である労働者等すべての労働者に適用され」ると明記しています。試用期間中でも、週1日のシフトでも、例外にはなりません。

派遣は少し違う読み方をします。「派遣労働者については、派遣先の都道府県の地域別(特定)最低賃金が適用されます」。つまり、派遣元が三重の会社でも、働いている先が愛知の施設なら、見る額は愛知の1,195円です。派遣看護師や派遣保育士を入れている法人は、派遣料金の改定通知が来る前提で秋の資金繰りを見ておいたほうがいい。

月給者はどうか。「賃金が時間給以外(月給・日給等)で定められている場合は、賃金を時間当たりの金額に換算して最低賃金時間額と比較します」とあります。時給表を直しただけでは終わらない、ということです。

実務で危ないのは、月給から役職手当だけを見て安心する形。所定労働時間が長い事業所ほど、時間当たりに割り戻したときの数字は下がります。うちで預かっている法人では、常勤の若手職員が換算後にぎりぎりだったケースが実際にありました。時給のパートより、月給の常勤のほうが見落とされやすい。


10月1日までに、事務が触る場所

去年の愛知県最低賃金1,140円は、効力発生日が令和7年10月18日でした。今回の予定は10月1日。単純に引き算すると17日早い計算になります(試算)。10月分の給与計算に、去年より半月ほど早く効いてくるということです。

順番に触っていきます。

  1. 時給者の一覧を出し、1,195円未満の行を抽出する。基本の時給だけで判定し、通勤手当や精皆勤手当は足さない
  2. 月給者を時間当たりに換算する。所定労働時間で割り、時間外・深夜割増・通勤手当・家族手当を除いた額で比較する
  3. 就業規則と賃金規程の時給の下限表記を確認する。金額を直接書いている規程は、10月に合わせて改定が要る
  4. 公開中の求人票の時給を直す。1,195円未満の求人が10月以降も残っていると、応募者が先に気付きます
  5. 派遣・業務委託の契約単価について、派遣元と改定時期をすり合わせる

Reliefの判断としては、1と2は9月中に終わらせておくべきだと考えています。10月の給与計算に入ってから発覚すると、差額の追給と過去分の確認が同時に発生して、事務が止まるからです。

あと2か月弱。時給表ではなく、まず賃金規程のほうを開いてみてください。あなたの法人の下限は、いま何円で止まっていますか。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。愛知県最低賃金は答申段階であり、最終的な金額と効力発生日は官報公示等の公表内容でご確認ください。


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