介護人材確保 3.97倍の市場で取れる採用策3つ【2026年】

3.97倍。── これが2025年3月時点、介護関係職種の全国平均有効求人倍率だ。 全職種平均(1.16倍)の約3.4倍。100人分の求人を出しても、書類を持って来る人が30人に満たない計算になる。 先月、通所介護を3事業所運営しているB理事長から電話が来た。「ハローワークに掲載して1ヶ月、問い合わせが3件しかなかった。もう採用できる気がしない」。正直、「そうですね、難しいですね」とは言えなかった。この数字の構造から話さないと、対症療法で終わるから。

離職率が下がっているのに、採用が詰まる理由

介護労働安定センターが2025年7月に公表した令和6年度実態調査によると、介護職員の離職率は12.4%(前年度比0.7ポイント低下)。2005年度以来の最低水準だ。 「ようやく辞める人が減ってきた」と感じている施設は多い。実際にそうで、これは施設が地道に改善してきた成果だと思う。 ただし、同じ調査で採用率が14.3%に低下している(前年度比2.6ポイント低下・過去最低)。 ここが問題の核心だ。離職率の低下幅が0.7ポイントなのに対して、採用率の低下幅は2.6ポイント。つまり「辞める人が少し減った以上のペースで、入ってくる人が減っている」。 厚生労働省の推計では、2026年度末には約240万人の介護職員が必要で、現状から25万人分のポジションが埋まらない見通し。年間6万3千人のペースで増員し続けないと間に合わない。 頑張って定着率を上げても、そもそも入り口が狭くなっているなら人は増えない。ここを見落としている経営者が多い。

処遇改善加算を「求人票」に書いているか

2026年6月から、介護職員等処遇改善加算の改定が施行された。厚生労働省によると、最高区分での取得と定期昇給(0.2万円)を合わせた合計で、介護職員の賃金を月最大1.9万円引き上げる効果が見込まれている。 この数字、求人票に書いているか? うちが関わっているクライアントで、処遇改善加算の内容を求人票に正確に記載できている施設は半数以下だ。「分配のルールが複雑で、どう書けばいいかわからない」という理事長が多い。一方で、「加算額を書いたら応募数が1.5倍になった」という施設もある。 採用候補者の立場で考えてほしい。「基本給○○円」とだけ書いてある求人票と、「基本給○○円+処遇改善加算(月○円相当・令和8年6月改定対応済み・最高区分取得)」と書いてある求人票、どちらに問い合わせるか。 給与額が同じでも、後者の方が「この施設はちゃんと制度を使いこなしている」という安心感を与える。処遇改善加算は採用コストゼロの差別化ツールになる。 今週やること:求人票の給与欄に「処遇改善加算(月○円相当・令和8年6月改定対応済み)」の1行を追加する。加算区分が不明な施設は、この機会に確認する。

リファラル採用と「5連休」が採用コストを下げる

2026年7月13日、SOMPOケアが介護職員向けの5連休制度について「取得率が約8割に定着した」と発表した。同社はこれと並行して、リファラル採用(従業員紹介採用)の強化も進めている。 大手の話と思って読み飛ばさないでほしい。 リファラル採用が機能するかどうかは、規模ではなく「今いるスタッフが、自分の職場を友人に勧めたいと思っているか」で決まる。処遇改善加算を最高区分で取っていれば、賃上げ効果は月に数万円規模になる。その施設は、それだけでリファラルの土台ができる。「うちは処遇改善加算を最高区分で取っていて、給与がちゃんと上がっている」──これをスタッフが口で言えるかどうか。 5連休制度は小規模施設では難しい面もある。でも「年に1回、5日間まとめて休める」という仕組みは規模に関係なく設計できる。シフトの組み方の工夫と、お互いのカバー文化の醸成。これがある施設とない施設では、リクルーターとしてのスタッフの話し方が変わる。 「採用できない」と言い続けるより、「スタッフが誘いたいと思う職場か」を問い直す方が先だ。

今週から動ける3つのアクション

採用の打ち手を一度に10個変えようとすると何も変わらない。今週はこの3つだけに絞る。
  1. 求人票に処遇改善加算の月額を明記する
    基本給の行に加えて「処遇改善加算(月○円相当・令和8年6月改定対応済み)」を追加。金額が不明な施設は、加算計算書または給与担当者に確認してから記載する。
  2. スタッフに「友人に職場を勧められるか」と聞く
    リファラル採用の土台は現場の満足度だ。管理職1人に聞くだけでいい。勧められると言う人が過半数いれば、紹介制度を設けるだけで入口が変わる。
  3. 加算の取得区分を再確認する
    令和8年6月改定で区分体系が変わった。最高区分Ⅰロを取れているかどうか、要件を現時点で確認する。加算額が小さければ、求人票への記載効果も薄くなる。
有効求人倍率3.97倍の市場で「来てくれるのを待つ」戦略は機能しない。 でも打ち手はある。処遇改善加算の可視化と、職場のリファラル力の底上げ。どちらもお金がほとんどかからない。今週、1つだけ動いてみてほしい。

出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度改正等により内容が変更される場合があります。


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