保育ICT推進加算 30万円──認可保育所が今やる3点【2026】

# 保育ICT推進加算 30万円──認可保育所が今やる3点【2026】

火曜の朝7時45分。横浜の認可保育所、A理事長は連絡帳アプリの月次レポートを開いていた。登降園の打刻、保育記録、保護者への一斉連絡、そして給食費の引き落とし。画面の中で全部が回っている。
ところが先週、こども家庭庁の令和8年度予算案を読み直していた事務長が一言、「これ、うちは加算の対象になる気がします」と差し出してきた。
資料の名前は「保育ICT推進加算(仮称)」。年30万円。要件を読み込んだら、A理事長は会議の予定を1本ずらした。今日はそういう話をしたい。


年30万円が新設される、ただし「4機能フル活用」が条件

こども家庭庁が令和8年度(2026年度)から新設する「保育ICT推進加算(仮称)」は、公定価格に上乗せで付く加算だ。1か所あたりの加算額は次のとおり整理されている。

  • 施設型(認可保育所、認定こども園、幼稚園):年30万円
  • 地域型(家庭的保育、小規模保育、事業所内保育、居宅訪問型保育):年18万円

注目すべきは、要件が「ICTを入れている」では足りないという点だ。こども家庭庁「令和8年度 保育関係予算案の概要」と関連する解説資料を突き合わせると、算定要件は大きく4つに整理される。

  1. ICT活用責任者を1名配置する(兼任可、専門資格は不要)
  2. 登降園管理/保護者連絡/保育記録/キャッシュレス決済 の4機能をすべて活用する
  3. 国のプラットフォーム(保育業務施設管理基盤、保活情報連携基盤)にアカウント発行対応する
  4. 「ここdeサーチ」掲載情報を最新化した状態で維持する

うちのクライアントの保育所のうち、登降園と保護者連絡だけアプリ化している施設は半数くらいある。一方で、保育記録は紙、決済は窓口集金のまま、というところもまだ残る。30万円を取り切るには、その「足りない2機能」を埋めなければならない。


補助金を取った年は加算ゼロ、という落とし穴

事務長の表情が一瞬曇った瞬間がある。「ICT補助金、確か昨年度に取りましたよね?」

そうなのだ。この加算は補助金との二重取りができない2026年度公定価格改定の解説(FAMCloud)によれば、補助金等を活用してICTを導入した年度は加算の対象外で、翌年度から算定可能になる。

つまり、令和7年度(2025年度)に「保育所等業務効率化推進事業」などの補助金で連絡帳アプリやICT機器を導入した施設は、令和8年度の加算は普通に取れる。一方、令和8年度に補助金を申請して交付決定を受けた施設は、その年は加算が取れない。
ここで詰まる経営者が、本当に多い。

もし今期、補助金とICT推進加算のどちらを優先するかで迷っているなら、初年度の収支シミュレーションを作るのが先だ。
たとえば補助金額が単年で30万円を上回るなら補助金を取り、翌年から加算に切り替える。下回るなら加算を狙って4機能を急いで揃える。判断材料はこの一本でいい。


新たな減算もセットで来る

もう一つ、見落としやすい話がある。こども家庭庁「子ども・子育て支援制度」の関連資料では、令和8年度に「経営情報等の報告」を行わない施設に対する減算制度も創設される方向で議論されてきた。

つまり、ICT推進加算が「加点」だとすれば、経営情報未報告は「減点」。プラスとマイナスが同じ予算編成のなかで一緒に組まれている。
連絡帳アプリの導入だけ進めて、経営報告の様式や提出ラインを社内で握れていないと、せっかく30万円を積んでも別経路で削られる。
うちが顧問契約に入っている認可保育所のB園長は、6月に入ってから「経営報告は誰がやる?」を職員会議の議題に追加した。今やる議論はその粒度だと思う。


今やる3点はこれだ

令和8年度の加算は、4月に始まる。あと9か月。理事会で1回、現場で1回、ベンダーと1回。最低でもその3つの机を回す前提で、今日から動かすべき項目を3つに絞る。

1. 4機能ギャップシートを作る

登降園管理、保護者連絡、保育記録、キャッシュレス決済。この4機能を縦軸、自園の現状を横軸にした表を1枚作る。
「導入済み・運用中/導入済み・運用未着手/未導入」の3段階で塗り分けるだけでいい。
半数以上が「未導入」の場合、加算条件のクリアまでに3〜6か月はかかる。逆算が始まる。

2. 補助金と加算のシミュレーションを並べる

令和7年度・8年度それぞれの年で、補助金を使う場合と使わない場合の収入を表に並べる。
公定価格の加算は満額で年30万円。一方、ICT導入補助金は単発で数十万円〜百万円規模が出ることもある。
単年で見るのか、3か年で見るのか。視点を変えると最適解が逆転することがある。理事会には3か年シナリオを出すと話が早い。

3. ICT活用責任者を「兼任で」決める

専門資格は不要、外部委託も不要、兼任で構わない、と整理されている。
にもかかわらず、現場でいちばん時間がかかるのは「誰がやるか」を決めるところだ。主任保育士か、副園長か、事務長か。
名前を1人決めて辞令を口頭で出す。それだけで加算要件の1つが消える。後は4機能の運用ログを誰がチェックするか、を月次のルーチンに組み込めばいい。

30万円は、認可保育所の年間予算から見ればそこまで大きな金額ではない。けれど、4機能を回し切った施設だけに付く加算という設計は、こども家庭庁から経営側へのメッセージだと思う。
ICTは「入れる」から「使いこなす」へ。
9か月後、どちら側に立っているか。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。最新の通知・要件は各公式サイトでご確認ください。


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