介護賃上げ補助金が5月末終了──6月1日改定で経営者がやること3つ
補助金は「つなぎ措置」だった──では6月以降はどうなるのか
令和7年12月から令和8年5月まで実施されてきた「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」。通称「賃上げ補助金」と呼ばれるこの仕組み、実は最初から「6ヶ月限定のつなぎ」として設計されていた。 厚生労働省が令和7年12月に発出した介護保険最新情報Vol.1448によれば、この補助金の対象期間は「令和7年12月〜令和8年5月」と明示されている。なぜ6月で終わるかといえば、令和8年6月1日に介護報酬の臨時改定(期中改定)が施行されるからだ。 補助金を賃金に乗せていた期間が終わり、今度は「処遇改善加算」という恒久的な仕組みに引き渡される。事業者からすると「もらい方が変わる」だけに見えるかもしれないが、実態はかなり違う。加算の算定には届出と計画書が必要で、提出していなければ6月以降は1円も入ってこない。 補助金は「都道府県が交付する」仕組みだったため、事業所が申請さえすれば比較的受け取りやすかった。対して加算は「介護報酬の一部として月次で入金される」仕組みなので、算定要件を満たした届出が前提になる。 この違いを把握できていない事業者が、今も一定数いる。届出が抜けていれば、ゼロだ。改定率+2.03%の中身──職種ごとに違う処遇改善加算の全貌
令和8年6月施行の臨時介護報酬改定は、改定率+2.03%だ。2024年度改定の1.59%を上回り、介護保険制度が始まって以来2009年度の+3.0%に次ぐ水準だという点を踏まえると、今回の改定がいかに大きいかがわかる。 数字だけ見るとそう見える。だが+2.03%は全体の平均値に近い数字であって、実際の処遇改善加算率はサービス種別によって大きく異なる。 GemMedの報道(2026年)をもとに整理すると、主なサービスの処遇改善加算I「ロ」(最高区分)は以下の通りだ:- 訪問介護:加算I「ロ」で28.7%(従来から加算対象)
- 通所介護:加算I「ロ」で12.0%(従来から加算対象)
- 訪問看護:1.8%(令和8年6月から新規対象)
- 訪問リハビリテーション:1.5%(令和8年6月から新規対象)
- 居宅介護支援(ケアマネ事業所):2.1%(令和8年6月から新規対象)
訪問看護・居宅介護支援が「初参加」──届出を忘れた施設がまだいる
従来から処遇改善加算を算定していた訪問介護・通所介護などの事業所は、4月15日までに「4月・5月分および6月以降分」を一括で計画書提出する特例措置が設けられていた。ここをきちんと対応できた事業所は、あとは6月1日の算定開始を待つだけだ。 問題は、訪問看護・訪問リハビリ・居宅介護支援(ケアマネ事業所)だ。 これらのサービスは「今回初めて処遇改善加算の対象になる」ため、過去に計画書を出したことがない。大阪市の案内(令和8年度処遇改善計画書提出について)によれば、これらの新規対象サービスは令和8年6月15日が計画書の提出期限となっている。 「6月から加算が取れる」と思って体制届・計画書の手続きを後回しにしていると、実際の算定開始は7月以降にずれ込む。6月分が丸ごと飛ぶ。 都道府県によっては「体制届の提出期限」が別途設定されていた(例:居宅系サービスは5月15日)地域もある。すでに期限が過ぎているケースでは、至急、管轄の都道府県の担当窓口に確認を入れる必要がある。 うちのクライアントで訪問看護ステーションを運営しているBさんに確認したところ、「4月の時点で一度案内が来たけど、通常の処遇改善加算と違う様式だったので後回しにしていた」とのことだった。こういうケースが実際にある。今週中に動いておくべき3つのこと
「補助金終了 → 加算開始」という切り替えは、手続きを漏らすと現金が入ってこなくなる。経営者・事務長が今週中に確認すべきことを3点にまとめる。 ① 賃上げ補助金の実績報告書を確認する 都道府県によって申請スケジュールが異なるが、補助金の実績報告書(令和8年5月分を含む)の提出期限が直近に迫っている地域がある。まず自治体の担当課に「今月中に提出が必要なものがあるか」を確認すること。補助金の申請・実績報告を忘れると、その期間の補助金を受け取れなくなる。 ② 処遇改善加算の届出・計画書の提出状況を確認する 厚生労働省の令和8年度介護報酬改定ページには、改定に伴う処遇改善加算の様式(別紙様式2-3等)がリストアップされている。自法人のすべての事業所・サービス種別について、届出・計画書の提出が完了しているかを一覧で確認すること。 訪問看護・訪問リハビリ・居宅介護支援を持つ法人は特に要チェックだ。6月からの算定を逃さないために、今週中に都道府県の担当窓口に提出状況を照会してほしい。 ③ 職員への説明を行う 処遇改善加算は「介護職員の賃金に充てる」という前提で運用され、加算額の全額を賃金改善費用に充てる義務がある。6月から何が変わるか、職員に伝えていない施設は今が最後の機会だ。「補助金が終わっても、6月からは加算で継続して賃上げします」という説明ができているかどうか。これが職員定着に直結する。 6月1日は介護業界の「給与改定記念日」になれる。うまく説明できれば採用のアピールポイントになるし、伝え方を誤れば「補助金が終わって給料が下がった」と誤解される。たった一言の違いで、職員の受け取り方はまるで違う。 処遇改善加算は金額が大きく、届出が複雑だ。制度が変わるタイミングこそ、書類の見直しと職員説明を一度に整理できる機会だ。そのチャンスを逃さないでほしい。出典・参考情報
- 介護保険最新情報Vol.1448「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」(厚生労働省、確認日:2026年5月27日)
- 令和8年度介護報酬改定について(厚生労働省、確認日:2026年5月27日)
- 2026年度介護報酬改定を決定、訪問介護では最大「28.7%」の処遇改善加算(GemMed、確認日:2026年5月27日)
- 令和8年度介護職員等処遇改善加算 処遇改善計画書の提出について(大阪市、確認日:2026年5月27日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の詳細・最新情報は各自治体および厚生労働省の公式情報を必ずご確認ください。
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