介護保険法改正案が衆院委を通過──附帯決議27項目が示す経営者へのシグナル

金曜の夜、22時を少し過ぎていた。溜まっていたメールを片付けながら、デスクの横にスマホを伏せて置いていた。通知音が鳴った。介護ニュースのアプリからだった。 「介護保険法などの改正案、衆院厚労委で可決。27項目の附帯決議も」 手が止まった。22時に仕事をしている自分のことはひとまず置いておいて、27項目という数字が気になった。附帯決議の件数が多いほど、その法律が「問題を抱えたまま通過した」ことを示す場合がある。ニュース本文を全部読んで、思ったことがある。この27項目は、施設経営者へのヒント集だ、と。 そう確信した。

改正案が委員会を通過した──3つの柱を押さえる

2026年5月22日、衆院厚生労働委員会が介護保険法・老人福祉法・社会福祉法などの改正案を原案通り可決した。委員会を通過した改正案は、このあと衆院本会議で可決されれば参議院に送られる。法律として施行されるまでには、まだいくつかのハードルがある。

この改正案に含まれる主要な施策は、大きく2本の柱と捉えている。

  • 中山間・人口減少地域のサービス運営基準の弾力化:過疎地でも介護サービスを維持できるよう、通常とは異なる基準を認める仕組みを新設する
  • 住宅型有料老人ホームへの登録制導入:中重度の要介護者を受け入れる住宅型有老ホームに事前規制として登録義務を課す

後者については、昨日の記事でも触れた。「住宅型有老ホームを運営しているなら、今週中に契約書と運営実態を確認しておいてほしい」という内容だった。繰り返すのはそちらに任せる。

今日は、むしろ前者と、そして附帯決議の話をしたい。27項目という「量」が示すもの。それが経営者にとっての本当のシグナルだと感じているからだ。


附帯決議とは何か──法律とは違う「もう一つの宿題」

附帯決議という言葉、聞いたことはあっても中身を詳しく説明できる経営者は、実はそれほど多くない。私も最初はそうだった。

附帯決議は、衆議院や参議院の委員会が法案を可決する際に「あわせて採択する決議」のこと。法律そのものではないので、違反したからといって罰則があるわけではない。しかし、行政(この場合は厚生労働省)には「誠実に対応する義務」があるとされている。

もっと平たく言うと、「この法律には不安な点があるが、賛成票を投じる。ただし政府はちゃんと対処しろ」という議会のメッセージだ。27項目という数は、それだけ「不安視された点が多かった」ことを意味する。27という数字。多い。

今回確認できた附帯決議の内容から、特に施設経営者が注目すべき2点を挙げる。

  • 中山間・人口減少地域のサービスの質や介護職の負担への影響を十分に検証すること
  • 住宅型ホームによる「囲い込み」への対策の実効性を担保すること

この2点が何を意味するか、もう少し掘り下げてみたい。


「囲い込み対策の実効性を担保せよ」──附帯決議が突きつけた現場への課題

「囲い込み」とは、住宅型有老ホームの運営事業者が、入居者に対して自社の訪問介護や通所サービスを過度に利用させる慣行のことを指す。利用者の意思や状態に関係なく、同一事業者のサービスで埋め尽くされてしまうケースだ。

うちがコンサルティングに入った施設でも、似たような状況を目にしたことがある。悪意があってやっているわけではなく、「自分たちのサービスが一番良いと思っているから」という場合もある。ただ、利用者の選択の自由が実質的に制限されていれば、それは問題だ。

今回の改正案は、住宅型有老ホームへの登録制導入によってこの問題に対処しようとしている。しかし附帯決議は「実効性を担保すること」と明示した。つまり、制度を作っただけでは不十分だという議会からのメッセージが附帯決議に込められている。

行政がこれを「誠実に対応」しようとすれば、今後の監査や指導においてこの点がより厳しく見られる可能性がある。住宅型有老ホームを運営している方は、今の段階で自施設のサービス利用状況を点検しておくことを勧める。

「入居者のケアプランに、自社サービスが集中しすぎていないか」。この一点だけ確認するだけでもいい。 今週中に。


中山間地域の「弾力化」と「質検証」要求──地方施設が見落としがちな変化

もう一点、中山間・人口減少地域の運営基準弾力化についても触れたい。

過疎地で介護サービスを維持するのは年々難しくなっている。スタッフが集まらない、採算が取れない、移動コストが重い。そのため「通常の基準では成り立たない地域に、例外的な運営を認める仕組み」を設けること自体は、前向きな政策だと私は思っている。

ただし、附帯決議にあるように「サービスの質や介護職の負担への影響を十分に検証すること」が求められている。

ここが曲者だ。弾力化という言葉を聞くと「規制が緩くなる」と捉えがちだが、行政には「その後の質を監視する義務」が課せられた形になる。落とし穴だ。検証の仕組みが整備されれば、将来的には「弾力化を活用した施設の運営実態」を行政がチェックする仕組みが生まれるかもしれない。

地方の施設経営者が今からやっておくべきことは、基準の弾力化を「何をしてもいい」と読まずに、むしろ「記録をちゃんと残しておく」準備だ。スタッフ配置の経緯、サービス内容の判断根拠。こういったドキュメントが、将来の検証対応で効いてくる。

「動ける」と「記録が残っている」はセットだと思っている。うちでもクライアントに常々伝えていることだ。セットで、必ず。

改正案は衆院本会議、そして参議院での審議へと進んでいく。施行まではまだ時間がある。でも、附帯決議に込められたメッセージはすでに出ている。27項目の「議会が心配したこと」が、これからの行政指導の重点項目に反映されていく可能性は高い。

あなたの施設では、今週から動けますか。


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出典・参考情報

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