強度行動障害 報酬改定案 重度障害者支援加算の3論点【2026】
5施設。状態が悪化した強度行動障害の方を他の事業所から受け入れ、集中的に支える「集中的支援加算(Ⅱ)」の対象として、都道府県から選ばれている全国の施設の数です。
厚生労働省は2026年10月30日の第67回障害福祉報酬改定検討チームの資料で、この数字を「とどまっている」と書きました(第67回 障害福祉報酬改定検討チーム 資料)。令和9年度の報酬改定に向けて、強度行動障害の方への支援について論点が3つ示されています。
私の読みでは、3つとも同じ方向を向いています。受け入れた最初の半年に厚く払う仕組みから、長く支え続ける事業所に払う仕組みへ。どれもまだ「検討してはどうか」の段階で、新しい単位数は1つも出ていません。
3つの論点は、どれも「受け入れた後」の話だった
強度行動障害かどうかは「行動関連項目」の合計点で見ます。障害支援区分の認定調査に併せて把握する12項目で、各項目0〜2点、24点満点。合計10点以上なら、報酬上の「重度障害者支援加算」の対象になります。
対象者は128,694人。そのうち18点以上の方が26,468人です(令和7年7月時点)。
今回の資料に並んだ論点はこの3つです(第67回資料 強度行動障害の状態にある者等への支援に係る報酬・基準について)。
| 論点 | 中身 | 主な対象サービス |
|---|---|---|
| 論点1 | 広域的支援人材の支援形態・専門性に応じた評価 | 生活介護、短期入所、施設入所支援、就労継続支援、共同生活援助、児童発達支援、放課後等デイサービスなど |
| 論点2 | 強度行動障害の特性に応じた評価 | 施設入所支援、共同生活援助 |
| 論点3 | 集中的支援の促進 | 短期入所、施設入所支援、共同生活援助 |
グループホームと障害者支援施設の経営者にいちばん効くのは論点2です。お金の流れが変わる可能性があるのは、180日目の扱いでした。
180日を過ぎると、1日1,460単位が960単位に落ちる
今の重度障害者支援加算は、個別支援を始めてから180日以内だけ「初期加算」が上乗せされます。資料が例に出したのは、グループホームで障害支援区分6、行動関連項目10点以上の入居者です。
- 基本報酬(世話人6:1の場合)600単位
- 重度障害者支援加算 360単位
- 180日以内の初期加算 500単位
合計1,460単位。181日目に初期加算の500単位が外れて、960単位になります。資料の言葉では「報酬額が3分の2程度に減額される」。
支援の手間は、181日目に3分の2になるでしょうか。資料は令和6年度の調査研究を引いて、外部の専門家が定期的に入っても、事業所が自分で標準的な支援を計画し実施できるまで「2年程度はかかると考えるのが妥当」としています。半年で区切る今の設計とは、桁が1つ違う。
方向性はこう書かれています。180日を超えた後も一定の評価を続け、支援の経過に応じた段階的な報酬設定にする(施設入所支援・共同生活援助)。図の段階や高さは「イメージ」と注記され、単位数はありません。
先月、名古屋市内で障害者グループホームを運営する法人のD理事長と、入居者ごとの算定表を確認しました。初期加算が切れる日に、赤ペンで丸が付いていた。「この日から、夜勤の人数は減らせないのに入ってくるお金だけ減るんです」。今回の案は、その赤丸の位置を動かす話です。
区分3以下でも、行動関連項目10点以上なら対象にする案
論点2にはもう1つ、グループホーム限定の案があります。
今、グループホームの重度障害者支援加算の対象は「障害支援区分4以上で、行動関連項目10点以上」の方です。ところが区分が比較的低くても、自力で移動ができて行動の制御が難しい方がいます。手がかかるのに加算が付かない。資料はこの支援負担が「必ずしも十分に評価されていない」との指摘を載せています。
グループホームで区分3以下、かつ行動関連項目10点以上の方は952人(令和7年7月時点)。方向性は「障害支援区分3以下であっても行動関連項目合計点数が10点以上の場合には重度障害者支援加算の算定対象とするなど」です。
この案が通ったときに困るのは、入居者の行動関連項目の点数を事業所が持っていないケースです。区分は把握していても、点数の内訳まで手元にある法人は、私の見てきた範囲では多くありません。区分3以下の入居者が何人いるか。その方たちの点数を、誰に聞けば分かるのか。
残る論点は、状態が悪くなったときに外から助けに入る仕組みです。こちらは数字がもっと厳しい。
集中的支援加算の算定率は、どのサービスも0.1%に届かない
集中的支援は、状態が悪化した方に対して専門の人材が入り、3か月を限度に集中的に支える仕組みです。広域的支援人材が事業所を訪ねる「事業所訪問型」と、施設入所支援などに一時的に住まいを移す「居住支援活用型」の2類型があります。
算定率は、令和8年4月の国保連データでこうなっています。
- 施設入所支援 0.08%
- 短期入所 0.06%
- 生活介護 0.05%
- 介護サービス包括型共同生活援助 0.02%
- 日中サービス支援型共同生活援助 0.00%
論点1は、この仕組みを動かす人の側です。広域的支援人材は88人(令和7年度現在)で、資料は「伸び悩んでいる」と書いています。今は訪問による支援もテレビ電話を使った遠隔支援も、手間の違いにかかわらず一律の評価です。方向性は、報酬水準を見直したうえで、訪問と遠隔それぞれに加算の単価を設けるというものです。
論点3は、受け入れる側です。冒頭の5施設がこれにあたります。集中的支援加算(Ⅱ)は、他の事業所から受け入れて集中的に支援した場合に3か月以内、1日500単位。選ばれる施設が少ない背景として資料が挙げたのは、選定要件の厳しさと運営の負担。それに、人材確保や受入体制づくりのコストに見合う評価になっていないことです。方向性は、障害者支援施設が運営する短期入所を使った集中的支援が進むよう、評価を見直すことです。
単位数が上がっても、体制がなければ1単位も入りません。準備は案の段階でもできます。
単位数が出る前に、研修修了者の数を数えておく
グループホームの重度障害者支援加算の算定要件には、人の要件が2つあります。
- 強度行動障害支援者養成研修(実践研修)の修了者を1名以上配置し、支援計画シートを作成していること
- 同研修(基礎研修)の修了者が、生活支援員の20%以上いること
集中的支援加算(Ⅱ)の施設に選ばれるための必須要件も、中身は同じ体制です。基礎研修修了者を生活支援員の20%以上置き、実践研修修了者を配置して支援計画シートを作る(令和6年3月19日付の通知)。
名古屋市内の事業所なら、市の研修日程が公開されています(名古屋市 令和8年度研修 年間スケジュール)。
- 実践研修の第2回は令和8年12月開催予定、定員40名。基礎研修の修了が受講の要件
- 基礎研修の第3回は令和9年2月開催予定、定員40名
- 受講料は1回10,000円(テキスト代込み)
対象は名古屋市内の障害福祉サービス事業所などで働く方で、児童・高齢者関係の事業所の方は対象外です(名古屋市 介護・障害情報提供システム)。基礎を終えないと実践に進めないので、今年度中に実践研修まで終える人を作るなら、12月の回が実質的な分かれ目になります。
D理事長の法人で最初にやったのは、生活支援員の名簿に研修の修了状況を1列足すことでした。20%に何人足りないのか。退職が1人出たら割り込むのか。数えてみるまで、誰も把握していなかったんです。
180日の線が動くかどうかは、令和9年度の改定で決まります。その日に加算を取れる側にいるのは、どちらの法人でしょうか。
出典・参考情報
- 第67回「障害福祉報酬改定検討チーム」資料(厚生労働省、確認日:2026年11月04日)
- 資料 自立訓練、自立生活援助、地域移行支援、地域定着支援、地域生活支援拠点等、共同生活援助、強度行動障害の状態にある者等への支援に係る報酬・基準について(PDF)(厚生労働省、確認日:2026年11月04日)
- 令和8年度名古屋市強度行動障害支援者養成研修【基礎研修】(第1回)について(名古屋市 介護・障害情報提供システム、確認日:2026年11月04日)
- 令和8年度強度行動障害支援者養成研修年間スケジュール(PDF)(名古屋市、確認日:2026年11月04日)
※ リンクは掲載時点のものです。報酬改定の内容は検討段階で、今後変わる可能性があります。
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