保育士 新卒採用 養成校との接点を作る3つの実務【2026】

「新卒採用、もう諦めようかと思っています」── 金曜の夜、認可保育所のB理事長から電話がきた。今年の新卒枠は、ゼロ。来年度の試算を出していて、頭が真っ白になったらしい。

私はその夜、サウナを諦めてPCを立ち上げた。B理事長の園は、3年前まで毎年2〜3名の新卒保育士を確保できていた園だ。何が変わったのか。話を聞きながら、私の頭の中で答えはだいたい出ていた。

新卒採用に失敗している園のほとんどは、求人媒体の使い方ではなく、養成校との接点設計でつまずいている。今日はその話をしたい。


諦める前に、養成校の就職担当の顔を思い浮かべられるか

B理事長に最初に聞いたのは、これだ。「養成校の就職担当の名前、何人言えますか」。返ってきた答えは、ゼロ人。これは珍しい話ではない。新卒採用に苦戦している園の経営者と話していると、ほとんどがこの状態に近い、というのが私の実感だ。

養成校の側に立つと、見え方は逆になる。1校あたりが年間に受け取る求人票は決して少なくなく、そのうち学生の手元に届くのは一部に絞られる。残りは「就職担当のデスクの引き出し」に静かに沈む。差は何で決まっているのか。一般社団法人 全国保育士養成協議会には全国の養成校が加盟しているが、各校の就職担当が学生に紹介する園を選ぶ基準は、求人票の体裁ではない。「就職担当本人が、園の現場を知っているか」。これに尽きる。

知ってもらうには、訪問するしかない。年に1回でいい。求人票を郵送する代わりに、理事長か園長が手で持っていく。たったそれだけで、養成校の引き出しから出してもらえる確率は跳ね上がる。うちのクライアントで、これを2年続けた園は、今年も予定通り3名の内定を出した。


養成校との接点を作る、3つの実務

では、具体的に何をやればいいのか。私がクライアントに勧めているのは3つだけだ。

① 求人票は年間スケジュールに合わせて、年3回送る

養成校の就職活動は、3年生の秋から4年生の夏までが主戦場だ。求人票を1回だけ送って終わる園が多いが、これでは弱い。3年生9月・4年生4月・4年生7月の3回、養成校の就職担当宛てに、それぞれ内容を変えて送る。9月は「来年度の見学会案内」、4月は「実習生募集と就職説明会」、7月は「秋以降の最終内定枠」。同じ求人票の使い回しでは、就職担当の引き出しに沈むだけだ。

② 実習生の受入時に、現場リーダーを「指導者」にする

養成校の学生が実習で来たとき、現場の主任クラスに丸投げしていないか。これは本当にもったいない。実習生は2週間、園の中身を観察している。そして養成校に戻り、同期に話す。「あそこの園、いい感じだったよ」と。養成校での口コミは、求人媒体の30倍の威力を持つ、と私は本気で思っている。実習指導者を1人決め、実習生1人ずつに3回は面談時間を作る。これだけで、その実習生が翌年の試験で「あの園を受けます」と就職担当に言う確率は明確に上がる。

③ オンライン見学会を「常設」にする

コロナ以降、養成校の学生は施設見学を躊躇するようになった。緊張する、迷惑をかけたくない。気持ちはわかる。だからこそ、事前申込不要・週1回・30分のZoom見学会を常設している園は、地方の養成校からも応募が来る。動画を撮って公開するのではない。リアルタイムの30分だけでいい。園長が「今、3歳児クラスの様子です」と画面越しに案内する。これを月4回、年間48回繰り返すと、参加者ゼロの週もある。だが3か月続けると、確実に応募経路が変わる。


処遇改善加算の話を、求人票の言葉に翻訳する

もう一つ、見落とされがちなポイントがある。求人票に書かれた「処遇改善加算あり」という1行だ。これでは学生に何も伝わらない。

養成校の学生は、処遇改善加算が何なのかを正確には知らない。当然だ。こども家庭庁の保育政策の枠組みで定められた制度だが、その内容は学生の生活実感とは離れている。求人票に必要なのは、制度名ではない。「あなたが入職したら、毎月の手取りに何円乗るか」という具体だ。

うちで採用支援に入った園では、求人票に「処遇改善加算III相当:基本給とは別に月額〇〇円を毎月支給」と書き換えた。金額の具体は園ごとに違う。だが、書き方を変えただけで、見学申込数は前年比で2倍を超えた。制度の話ではなく、自分の財布の話。これが学生の言語だ。


来週から動くなら、どの順番か

B理事長との電話を切る前に、私はこう伝えた。「3つ全部を一気にやらないでください」。来週やるべきことは1つだけだ。

養成校の就職担当に、来週中に電話を1本入れること。訪問のアポを取る、それだけでいい。求人票の書き換えも、Zoom見学会も、その後でいい。順番を間違えると、現場が回らなくなる。

新卒採用は、半年で結果が出る世界ではない。3年かけて養成校との関係を耕す経営者が、3年後に毎年安定して新卒を確保できる園を作っている。私はそういう園を、何件も見てきた。逆に言えば、今年動かなければ、3年後も同じ電話が金曜の夜に鳴る。

B理事長の園が来年どうなるかは、まだわからない。ただ、月曜の朝に電話をかけ始めたという連絡が、今朝届いた。これは、いい兆しだと思う。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。具体的な制度運用については、最新の通知・自治体の指示を必ずご確認ください。


あわせて読みたい


株式会社Reliefのサービスで、事業運営を強力サポート!

株式会社Reliefは、医療機関や介護・福祉・保育施設の運営をトータルサポートする専門企業です。
業界特化型のオンラインアシスタント「セレナ」
月一回からはじめる事務長アウトソーシング「困ったときのじむちょー君」
バックオフィスの業務改善・効率化、MoneyForwardクラウドICT・クラウドDX導入支援
経営課題の解決や業務効率化を実現し、貴社の発展を全力でサポートいたします。