訪問看護 ターミナルケア療養費 算定漏れ──記録3点で防ぐ【2026】

25,000円。これが訪問看護のターミナルケア療養費1の単価だ。1件取りこぼすたびに、ステーションの月次収入は25,000円沈む。原因のほとんどは、看護師の技術ではなく記録の3点で決まっている。

私は株式会社Reliefの代表として、訪問看護ステーションの事務長代行や請求支援に入る機会が多い。今年に入ってからだけで、月の請求作業に同席させてもらった訪問看護STは4件。そのうち3件で「ターミナルケア療養費の算定漏れ」が現役で発生していた。点数を知らないわけではない。要件も看護師は理解している。それでも漏れる。理由は記録の作り方が、算定要件を「証明できる形」になっていないからだ。

今日は、医療保険の訪問看護ターミナルケア療養費について、算定漏れを引き起こす記録の3点と、その潰し方を整理する。資料は厚生労働省の通知と告示、それから「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(以下、本記事中では「最終段階ガイドライン」)を一次情報として使う。


25,000円が消える3つの瞬間

訪問看護ターミナルケア療養費は、医療保険で2区分に分かれる。ターミナルケア療養費1が25,000円、ターミナルケア療養費2が10,000円。在宅で看取った利用者のうち、要件を満たす場合に1か月に1回算定できる(厚生労働省 四国厚生支局 訪問看護ターミナルケア療養費)。

算定要件はいくつかあるが、現場で「取り逃す瞬間」は決まって次の3点に集約される。

  1. 死亡日と死亡日前14日以内の15日間に、訪問看護基本療養費等を2回以上算定できていない
  2. 最終段階ガイドラインに沿った話し合いと意思決定が、記録から読み取れない
  3. 24時間連絡体制と主治医連携の「証拠」が、その月の記録に残っていない

事業所のホワイトボードには「ターミナル算定OK」と書いてあるのに、レセプト担当が落とす。これがリアルだ。看護師の側は「ちゃんとケアした」。事務の側は「証憑が組み立てられない」。Reliefの請求伴走でも、最初の月にこのギャップを潰しきれるかが勝負所になる。

では、3点それぞれをどう潰すか。順番に下りていく。


死亡日14日前から逆算する記録の組み立て方

1点目は「死亡日及び死亡日前14日以内の計15日間に、訪問看護基本療養費・精神科訪問看護基本療養費・退院支援指導加算のいずれかを2回以上算定」という期間要件だ(厚生労働省 近畿厚生局 訪問看護療養費の取扱いの理解のために)。

言葉だけ読むと当たり前に聞こえる。だが、運用に落とすと躓きどころが2つある。

1つ目は「14日以内」のカウントを死亡日から逆算で見ていないこと。日々の訪問計画は前から積み上げで作るので、終末期に入った利用者の最終15日を「枠」として意識する設計になっていない。先週末から急変して訪問頻度を上げたケースで、その前の訪問が16日前なら、要件はギリギリ崩れる。Reliefでこの設計を立て直すときは、ターミナル移行を判断した時点で「直近2週間カレンダー」をカルテ上段に常時表示するルールに変える。前の訪問日からの日数が一目で出る状態を作っておかないと、現場の判断では押さえられない。

2つ目は「2回以上」の中身を取り違えること。短時間の電話対応や、ご家族への助言だけでは訪問基本療養費に当たらない。実訪問が15日間で2回以上ある必要がある。終末期は本人の状態が急変する局面が多く、訪問が空白になりやすい時期と重なる。看護師が「行きたいけれど呼ばれていない」という状況を、事業所側は察知して訪問機会を提示し続けるか、ご家族と訪問計画を握り直す。これが組織の動きとして回らないと、要件は静かに崩れる。

うちが請求伴走で最初に作り変えるのは、この「死亡日前15日の訪問日リスト」を、看護記録の冒頭に張り付けるテンプレだ。請求担当がレセプト時に確認するのではなく、看護師自身が訪問のたびに15日カレンダーを更新する。順番が逆になっている事業所が、想像以上に多い。


ガイドラインを「読んだ証拠」を残すたった1つの方法

2点目は、最終段階ガイドラインの取り扱いだ。算定要件には「『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』等の内容を踏まえ、本人の意思決定を基本に多職種で話し合い、医療・ケアを提供する」という趣旨の規定がある(厚生労働省 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン)。

この要件は、看護師が「読んで知っている」ことではなく、「その利用者の支援に当たって、ガイドラインの考え方を踏まえた話し合いが行われた」ことを記録で示す必要がある。ここを誤解している事業所が一定数ある。

監査の場で最も突かれるのが、看護記録のどこを見ても「本人・家族との話し合いの内容」「意思決定の経緯」「多職種(主治医・ケアマネ・薬剤師等)との合意形成」が見当たらないケース。ガイドラインに沿った対応をしていても、それが文章として残っていなければ算定根拠にならない。

Reliefでは、ターミナル移行のタイミングで「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)記録シート」を1枚作る運用を勧めている。記載項目はシンプルでいい。①現在の本人の理解、②本人の希望(食事・苦痛緩和・蘇生措置・看取りの場所)、③家族の希望、④主治医との合意事項、⑤次回の見直し時期。この1枚があるだけで、看護記録は「ガイドラインを踏まえた」証憑として機能する。

シートはWordでもKintoneでも電子カルテのテンプレでも構わない。重要なのは、終末期のすべての利用者で必ず1枚作るルールにし、利用者氏名・記載日・記載者を明記すること。フォーマットを統一すれば、5分で書ける。


24時間体制と主治医連携──届出と現場運用のズレを潰す

3点目は、24時間連絡体制と主治医との連携体制だ。算定要件として「24時間連絡できる体制を確保し、必要に応じて訪問できる体制を整備していること」「主治医との連携の下にターミナルケアに係る計画・支援体制について利用者とその家族に説明し、同意を得ていること」が定められている(厚生労働省 訪問看護療養費に係る告示・通知ポータル)。

24時間体制については、24時間対応体制加算の届出を出していれば「組織として満たしている」状態は作れる。問題は、その月の利用者ごとに「24時間連絡できる体制を本人・家族に説明し同意を得た」記録があるか。同意書のサインがあっても、説明日や説明者の記載が抜けていると弱い。

主治医連携も同じ構造だ。月次のカンファレンスで看護師長が主治医と話している、訪問看護指示書はもらっている、それだけでは「ターミナルケアの計画と支援体制について連携した」根拠にはなりにくい。Reliefの請求伴走では、ターミナル算定が見込まれるケースで以下の2点を必ず残す。

  • 主治医とのターミナル計画共有の記録(日付・媒体・要点。電話なら通話メモ、FAXなら写し、メールなら本文)
  • 本人または家族への説明記録(日付・場所・説明者・説明内容・同意の有無)

地味な作業だが、ここが揃っていない事業所が大半だ。看護師は当然のことだから記録に残さない。事務側はそれが算定根拠だと知らない。組織として「終末期に入った瞬間に、これとこれの記録を残す」をルール化する。これが入っていない訪問看護STは、平均して年200,000〜400,000円規模で算定漏れを出している。Reliefの伴走実例の感覚値だ。


算定漏れを防ぐ最終チェックリスト

3つの要件を、月末のレセプト前に必ず確認する形に落とす。終末期に入った利用者の死亡月は、看護師長・事務長・請求担当の3者で以下を確認する仕組みにしたい。

  1. 死亡日と死亡日前14日以内の15日間に、訪問看護基本療養費等を2回以上算定できているか(訪問日カレンダーを見て一目で判定)
  2. ACP記録シート(またはそれに代わる記録)が1枚以上あるか、本人・家族との話し合いと意思決定が看護記録に残っているか
  3. 24時間連絡体制について本人・家族への説明記録主治医とのターミナル計画共有記録がその月にあるか

3点すべてに○がついて、ようやくターミナルケア療養費1の25,000円が請求できる。1つでも欠ければ落ちる。療養費2(10,000円)に下がるか、算定そのものが見送りになる。

うちが伴走したあるステーションでは、この3点チェックを導入した翌月から、ターミナル算定の漏れが半年間ゼロで継続している。看護の中身は変えていない。記録のフォーマットと、月末の確認フローを変えただけ。在宅看取りを支えるステーションの売上を守るのは、看護師の腕と同じくらい、この事務側の段取りだと思っている。

記録は、ケアの質を映す鏡だ。看護師が利用者のために行った話し合いと判断を、記録の中で見える形に残す。それは監査対策ではなく、組織として看取りに向き合った証になる。私はそう考えている。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。算定要件・点数は今後の告示改正で変更される場合があります。請求実務は所属の地方厚生(支)局の指導通知を直接確認してください。


あわせて読みたい


株式会社Reliefのサービスで、事業運営を強力サポート!

株式会社Reliefは、医療機関や介護・福祉・保育施設の運営をトータルサポートする専門企業です。
業界特化型のオンラインアシスタント「セレナ」
月一回からはじめる事務長アウトソーシング「困ったときのじむちょー君」
バックオフィスの業務改善・効率化、MoneyForwardクラウドICT・クラウドDX導入支援
経営課題の解決や業務効率化を実現し、貴社の発展を全力でサポートいたします。