カスハラ義務化10月──介護・医療施設が5カ月で整える3つの対策
なぜ今年の秋が「もう逃げられないタイムリミット」なのか
カスタマーハラスメントとは、顧客・利用者・その家族の言動で、「社会通念上許容される範囲を超えたもの」により労働者の就業環境が害される状態を指す。令和7年(2025年)6月4日、改正労働施策総合推進法が成立。6月11日公布、令和8年(2026年)10月1日施行が決まった(厚生労働省)。 施行まで5カ月を切っている。 介護・医療現場でのカスハラは珍しくない。「担当を今すぐ替えろ」「お前じゃ話にならない」「SNSに書くぞ」──夜間のナースコールで呼びつけては怒鳴り散らすご家族、診察待ちのたびに受付を怒鳴る患者。スタッフはそれを「仕事のうち」と我慢し続け、ある日突然「辞めます」と言う。 その構造が、法律によって「経営者の問題」として位置づけられた。1人でも雇えばすべて対象──「中小だから大丈夫」は通らない
今回の法改正で特筆すべきは、対象の広さだ。従業員を1人でも雇用している事業主は、すべて義務の対象になる(BUSINESS LAWYERS)。 2026年10月1日の施行初日から、全事業主が対応を求められる。「クリニックが小さいから」「うちは家族経営みたいなものだから」という理由は、法律上通用しない。 行政対応の観点からも重要だ。カスハラ対策を何も講じていない状態で労働局の指導を受けた場合、「義務違反」として対応を迫られる。対策が記録として残っていれば、経営者として誠実に対応した証拠になる。逆に言えば、記録がない=対策なし、と見られる。 では何をすれば「対策している」と認められるのか。義務として講ずべき4つの措置──最低ラインはここ
厚生労働省が2026年2月26日に公布したカスタマーハラスメント防止指針(令和8年厚生労働省告示第51号)は、事業主が整えるべき措置を4点に整理している。- カスハラに対する方針の明確化と周知・啓発
「当施設はカスタマーハラスメントを容認しない」という方針を、規程・掲示・朝礼等で明文化し、スタッフ全員に周知する。A4一枚のペーパーでいい。まず「言葉にして残す」ことが出発点だ - 相談体制の整備
スタッフが被害を申告できる窓口を設ける。小規模施設なら管理者直通でもいい。「誰に言えばいいかわからない」状態を解消することが目的であり、複雑な仕組みは必要ない - 被害を受けた労働者への事後対応
申告があったら迅速に事実確認し、必要に応じて担当交代・利用制限・警告書の送付等、具体的な手を打つ。「見なかったことにする」はアウトだ - 相談者への不利益取扱いの禁止
「カスハラを報告した」ことを理由に評価を下げたり、シフトを減らしたりすることは法律で禁じられている。これを規程に明記しておく
5カ月で整えるロードマップ──月ごとに何をするか
「10月まで時間がない」と焦る前に、優先順位をつけて動けば十分間に合う。うちがクライアントに提案しているのは、以下のステップだ。 5〜6月:方針策定と社内周知カスタマーハラスメント防止方針をA4一枚で作成し、スタッフに配布・掲示する。「暴言・暴力・過度な要求等の著しい迷惑行為には、毅然と対応します」という一文が核になる。就業規則や施設の利用規約への追記も並行して進めたい。 7〜8月:相談記録フォームの整備と窓口設置
スタッフがカスハラを受けたときに記録するシートを作る。日時・場所・相手の言動・自分の対応・精神的影響の有無──この5項目があれば十分だ。紙でもExcelでも構わない。「記録が残る仕組み」があることが本質で、ツールの格好よさは関係ない。 9月:研修の実施
全国介護付きホーム協会が6月11日(14時〜15時、定員100名・無料)に、厚労省担当者を招いたオンライン研修を開催する(介護ニュースJoint 2026年5月19日)。申込締切は6月8日17時。管理者1名が受講し、その内容を現場スタッフへ展開する形でも研修実績として残せる。 10月:施行日点検
①方針の明文化・周知、②相談窓口の設置、③記録フォームの準備。この3点が揃っているか確認する。ゼロから始めて5カ月あれば、この3点は必ず整えられる。 A理事長に、あの電話の2週間後、「まずやることはこの3つです」と伝えた。「じゃあ今週中に方針だけ作ります」という返事が来た。それで十分だ。動き始めた経営者が、一番リスクを低くできる。
出典・参考情報
- 令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について(厚生労働省、確認日:2026年5月20日)
- カスハラ対策、10月から義務化へ、無料オンライン研修に厚労省担当者が登壇=介ホ協(介護ニュースJoint、確認日:2026年5月20日)
- 2026年10月カスハラ対策が義務化!企業が講ずべき措置を解説(BUSINESS LAWYERS、確認日:2026年5月20日)
- 2026年度から義務化「介護事業所のカスタマーハラスメント対応」(介護サービス情報公表システム、確認日:2026年5月20日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の詳細は必ず一次情報をご確認ください。
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