介護施設の採用が変わる3条件 ── 求人票・Indeed活用・職場改善の正しい優先順位

木曜の午後3時、大阪府内の特別養護老人ホーム。採用担当のDさんは、Indeedの管理画面を3週間ぶりに開いた。応募数、1件。画面を閉じる前に、ため息が1つ出た。「求人を出せば誰か来る」は、もう通用しない。

「出せば来る」はいつ終わったのか ── 2026年の介護採用の地図

厚生労働省が2024年7月に公表したデータによると、第9期介護保険事業計画の推計で、2026年度には全国で約240万人の介護職員が必要になる。2022年度の実績は215万人。つまり約25万人の上積みが必要で、年間6.3万人ペースで確保し続けなければ間に合わない計算だ。 問題は、現場の採用が「今月何人来たか」レベルの話ではすでになくなっているということだ。構造的に人が減り続ける中で、どの施設も同じ求職者を奪い合っている。 私がクライアントの介護施設と話すとき、「採用が難しい」という言葉を聞かない月はない。だが、よく聞くと「求人を1本出した」「応募が来ない」「仕方ない」で思考が止まっているケースが圧倒的に多い。難しいのは事実だが、「難しいからどう動くか」が問われている。 この先で話すのは、同じ条件でも採用が動き出した施設が実際にやったことだ。求人票の数と中身、ツールの使い方、そして定着率──この3つを順番に整理する。

求人を1本から4本に増やしたら、13日後に何が起きたか

Indeedを使っている施設は多い。ただ、使い方が「とりあえず1本掲載している」で止まっている施設が多いのも現実だ。 Indeedの仕組みを一言で言えば、クリック課金型の検索エンジンだ(Indeedは「求人検索エンジン」と自社を定義している)。求職者が「介護 大阪 夜勤なし」と検索したとき、関連する求人が上位に表示される。ここで大事なのは、掲載する原稿の数が多いほど、さまざまな検索軸にヒットしやすくなるという点だ。 介護職採用の実績を持つ採用支援会社トラコムの事例によると、ある施設が原稿数を1本から4本に増やした結果、開始から13日後の変化は以下の通りだった:
  • 表示回数:462回/日 → 957回/日
  • クリック数:8回/日 → 33回/日
  • 応募数:0件 → 4件(13日後時点)
劇的な改善とまでは言えないかもしれない。ただ、やることは「原稿の数を増やす」だけだ。「夜勤あり・パート」「日勤のみ・正社員」「介護福祉士向け」「未経験者向け」のように、求職者の条件別に原稿を分けて出すのが定石になっている。費用はクリック数に応じて課金される仕組みなので、応募が増えなければ費用も増えにくい構造になっている。 ただし。ここで止まってはいけない。求人票に人が来ても、中を読んで離脱されているなら意味がない。

採用に強い施設の求人票には「3つの要素」がある

私がこれまで見てきた中で、応募が止まらない施設の求人票には共通点がある。逆に、誰も来ない施設の求人票にも共通点がある。 来ない求人票の典型は「給与・待遇だけ」で埋まっていること。 「基本給20万円、賞与年2回、社保完備」──これはどこの施設も書いている。求職者には同じ内容の求人が数十件並んで見えている。その中でクリックされるには、ここにしかない何かが必要だ。 採用が動いている施設が書いているのは、次の3要素だ:
  1. 「なぜ、この施設で働くのか」の理由:理念・大切にしている価値観・施設の雰囲気。「家族的な職場です」ではなく、「毎月1回、全職員が参加するランチミーティングがある」レベルで具体的に書く
  2. キャリアパスの見え方:入社後に何ができるようになるか、資格取得支援の具体的な内容(費用補助額、勉強時間の配慮など)
  3. 実際に働いている職員の声:「現場スタッフのコメント」「入職1年後のインタビュー」形式で、リアルな職場像を伝える
これは採用ツールの問題ではない。求人票の「中身の問題」だ。Indeed・engage・ジョブメドレーどこに出しても、読まれて「応募したい」と思われなければ同じことになる。 ではツールと求人票が揃えば万全か。そうでもない。

採用できても、3か月で辞められたら元も子もない

採用に強い施設と弱い施設の差は、採用「後」にもある。 厚生労働省の介護人材確保施策では、処遇改善・多様な働き方の導入・認証制度の3本柱が掲げられている。認証制度とは、人材育成と待遇改善に取り組む事業所を都道府県が認証評価する制度で、この認証を取得している施設は「職場として信頼できる」というシグナルを求職者に発することができる。 定着率が高い施設に共通するのは、次の3点だ:
  • 夜勤・早番・遅番を本人の希望を聞いたうえで組んでいる:「固定シフトで子育てと両立しやすい」という口コミは、採用媒体に課金するよりずっと効く
  • 入職後3か月のフォロー体制がある:OJTの担当者を決め、困ったときの相談先を明確にしている施設は離職率が下がる傾向がある
  • 「辞めた理由」を上司が把握している:これができていない施設は、同じ理由で次の人も辞める。当たり前のことだが、できていない施設が多い
正直に言う。採用費を増やしてもらいに来る支援業者は多い。だが私がクライアントに最初に言うのは「今の離職率を教えてください」だ。離職が止まらない状態で採用を増やしても、ざる水を入れているようなものだ。

今日から動ける3項目

まとめとして、今すぐ確認できることを3つだけ挙げる。
  1. Indeed の掲載原稿は何本か? 1本なら、求職者の条件別(雇用形態・勤務時間帯・経験有無)に分けて3〜4本に増やすことを検討する
  2. 求人票に「なぜここで働くのか」が書いてあるか? 給与・待遇だけなら、現場職員の声・キャリアパス・職場の具体的なエピソードを1つ以上追加する
  3. 直近6か月の離職者数と退職理由を把握しているか? 把握できていないなら、今週中に人事担当と確認する。採用の前にここが詰まっていないか確認する
採用は「たくさん来れば誰かいる」ではなくなった。どこを変えるか、どこに投資するか。地道だが、この判断の積み重ねが「採用に強い施設」を作る。

出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。厚生労働省の資料は更新される場合があります。最新情報は各公式サイトでご確認ください。


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