介護施設の採用難、賃金格差8万円でも応募が増えた方法

「処遇改善加算もらってるのに、なんで応募が来ないんですか」── 3月のある夜、訪問介護事業所のA所長からそう言われた。私はしばらく黙っていた。加算があれば人が集まる、そんな単純な話なら誰も苦労しない。でも「なぜ来ないのか」の構造を整理できている施設が、まだほとんどない。今日はその話をする。

介護と他産業の賃金差は「月8.2万円」──この格差の本当の重さ、わかってますか

2026年4月15日、介護ニュースJointが最新データを報じた。

介護職員の月収(賞与込み)は31.4万円。全産業平均は39.6万円。その差、8.2万円。前年から0.1万円だけ縮まっているが、今春闘で他産業がさらなる賃上げを進めれば、格差は再び開く可能性がある。

月8.2万円というのは、年間にすると約98万円の差だ。求職者はスマートフォンで何十社もの求人を横並びで見ている。「うちは処遇改善加算があります」と言っても、隣の製造業や物流企業の基本給と比較されれば、数字が語る。

施設側が「加算があるから競争力がある」と思っている間に、求職者はもう別の仕事を選んでいる。それが今の現実だ。

では、この格差がある中でも採用を続けている施設は何が違うのか。一番の差は「加算の使い方」にある。


処遇改善加算を「求人票」に書けていますか──告知していない施設が多すぎる

令和8年度介護報酬改定(臨時)により、2026年6月から処遇改善加算が再び拡充される。GemMedが整理した加算率によると、主要サービスの加算率は以下の通りだ。

  • 訪問介護(加算I「ロ」):最大 28.7%
  • 通所介護:最大 12.0%
  • 介護老人福祉施設:最大 17.6%
  • 居宅介護支援(ケアマネ):2.1%6月に初めて新設

たとえば基本給24万円の訪問介護職員が加算Iを取得している施設に転職すれば、加算分で月数万円の上乗せが見込める。これは十分な差別化になる。

ところが、うちのクライアントを見ていると、加算を取得している施設でも、求人票に「処遇改善加算あり(最大○%相当)」「加算込み月収○万円以上」と書いていない施設が7割を超える。取ってはいる。でも告知していない。これは完全な機会損失だ。

求職者が比較するのは基本給だけではない。「実際に月いくら手元に来るか」が意思決定の軸になっている。加算込みの月収イメージを数字で示すだけで、クリック率も応募率も変わる。ただし、どの媒体に載せるかを間違えると、どれだけ原稿を磨いても届かない。


Indeed と engage、「両方やっている」施設と「両方中途半端」な施設の差

求人媒体の話になると、「Indeedと engageはどちらがいいですか」と聞かれることが多い。答えは「どちらも使う、ただし役割を分けて」だ。

整理するとこうなる。

  • Indeed:検索流入に強い。「介護 パート ○○市」のようなキーワードで引っかかる広告型。無料掲載でも始められる。写真のクオリティと原稿の1行目が勝負を決める
  • engage:応募意向が高い人向けの"詳細説明ページ"。職場の雰囲気、先輩スタッフの声、入職後のキャリアパスを深く伝える場として機能する

この2つは補完関係にある。Indeedで興味を持った求職者が、engageで「本当に働けそうか」を確認して応募する、というルートが実際に多い。

うちがクライアントに必ず確認するのは2点だ。「Indeedの原稿1行目に処遇改善加算込みの月収が書いてあるか」と、「engageに職員の写真が5枚以上あるか」。両方ゼロという施設が相当数いる。

加算率、月収イメージ、職場の写真、職員の生の声。この4点を両媒体に揃えるだけで、応募数は変わる。ただし、来てもらった後の設計をしていないと、同じコストを毎年繰り返す羽目になる。


採用できても3か月で辞める施設が繰り返している"同じミス"

「採用できたのに3か月で辞めた」という話はどの業種でも聞くが、介護は特に多い。理由はほぼ同じだ。「思っていた仕事と違った」。入社前の情報開示が足りていない。

夜勤の回数、利用者の重度感、先輩職員の年齢層と雰囲気、給与計算の締め日。これらを事前に開示しきれていないと、入社後に「こんなはずじゃなかった」が発生する。

求人票に「アットホームな職場です」と書いておきながら、現場では人間関係のトラブルが続いている施設を、私はいくつも見てきた。入職後1か月で辞められると、採用コストはゼロに戻るどころかマイナスになる。

賃金格差があっても採用を続けられる施設の共通点は、「正直に話して、来てもらう」というスタンスだ。不利な情報も含めて開示することで入職後のミスマッチが減り、定着率が上がる。採用コストは結果的に下がっていく。

月8万円の格差は、明日から消えるわけじゃない。でも、その格差の中でも選ばれる理由をつくることはできる。正直に伝えて、正直に働いてもらえる施設かどうか ── そこが今、経営者として問われている。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の詳細は各省庁の最新情報をご確認ください。


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