業務改善助成金 令和8年度——医療・介護・保育施設が賃上げと設備投資を同時に実現する方法

令和6年10月、東京の地域別最低賃金は1,163円になった。前年比50円の引き上げで、過去最大幅の更新が続いている。医療・介護・保育施設の多くは人件費が支出の大半を占めるため、最低賃金の上昇は経営に直結する話だ。

ただ、この「賃上げ」をきっかけに最大数百万円の設備投資補助が受けられる制度が存在する——業務改善助成金だ。令和8年度(2026年度)も継続されており、申請は年度ごとに受け付けられる。4月はまさに申請を検討し始める最適なタイミングだ。


業務改善助成金とは——「賃上げ」と「設備投資」をセットで支援する制度

業務改善助成金は、厚生労働省が所管する助成金で、事業場内最低賃金(=職場で最も低い時間給)を一定額以上引き上げるとともに、生産性向上に資する設備投資等を行うことで、その設備投資費用の一部が助成されるものだ。

仕組みをシンプルに言うと:
「賃上げ計画」+「設備投資計画」を申請 → 交付決定後に実施 → 費用の3/4〜4/5が戻ってくる

「どうせ賃上げしなければならないなら、設備も入れて補助をもらう」という発想の制度だ。設備投資ありきではなく、賃上げとセットであることが条件となっている。


医療・介護・保育施設は対象になるか

対象は中小企業・小規模事業者に限られる。業種別の要件は以下のとおり:

業種 資本金または出資額(A) 常時使用する労働者(B)
サービス業
(医療・福祉・保育含む)
5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
製造業・その他 3億円以下 300人以下

A・Bいずれかを満たせば対象。クリニック・診療所、介護事業所、保育所の多くは従業員100人以下のサービス業として対象になる。

また、以下の条件も満たす必要がある:

  • 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
  • 解雇・賃金引き下げ等の不交付事由がないこと
  • 申請は事業場(店舗・施設)単位で行う

「差額50円以内」という条件は、すでにある程度賃金水準を引き上げてきた施設には注意が必要だ。事業場内最低賃金が地域別最低賃金より51円以上高い場合は対象外になる。まず自施設の事業場内最低賃金を確認することが第一歩だ。


コース別の助成上限額と助成率

助成金の額は「どれだけ最低賃金を引き上げるか(コース)」と「何人分の賃金を引き上げるか」によって変わる。

助成率

設備投資等の費用に以下の助成率をかけた金額と助成上限額を比較し、低い方が支給される:

引き上げ前の事業場内最低賃金 助成率
1,000円未満 4/5(80%)
1,000円以上 3/4(75%)

助成上限額(30人未満の事業場の場合)

コース 最低賃金の引き上げ額 1人 2〜3人 4〜6人 7人以上
30円コース 30円以上 90万円 90万円 100万円 120万円
45円コース 45円以上 80万円 110万円 140万円 160万円
60円コース 60円以上 110万円 160万円 190万円 230万円
90円コース 90円以上 170万円 240万円 290万円 450万円

※ 事業場規模が30人以上の場合は上限額が異なります。詳細は厚生労働省公式ページをご確認ください。

たとえば、スタッフ10名の介護事業所が60円コースで4〜6人分の賃金を引き上げる計画で申請した場合、設備投資費用の最大75〜80%、上限190万円まで助成が受けられる。


医療・介護・保育施設で使える「設備投資」の具体例

助成対象は「生産性向上・労働能力の増進に資する設備投資等」と定義されており、医療・介護・保育現場では以下のような投資が対象になり得る。

業種 設備投資の例
医療(クリニック) 電子カルテ・予約管理システム、自動精算機、問診票デジタル化ツール
介護施設 介護記録システム(介護ソフト)、見守りセンサー、洗濯乾燥機等の業務機器
保育施設 保育ICTシステム(連絡帳・登降園管理)、調乳器等の設備、食洗機
共通 会計・労務管理ソフト導入、専門家による業務フロー見直し(経営コンサルティング)

経営コンサルティング費用も助成対象になる点は見逃されやすい。「専門家による業務フロー見直しによる顧客転換率の向上」など、業務効率化につながるコンサルティング契約は対象になり得る。ただし、何が対象になるかは申請前に管轄の労働局に確認することが必要だ。

なお、パソコン・スマートフォン・タブレット等の端末や周辺機器は、原則として一般事業者には対象外(物価高騰等要件を満たす特例事業者のみ対象)。この点は誤解が多いので注意したい。


申請の流れと令和8年度の注意点

基本的な手順

  1. 事前相談:管轄の労働局雇用環境・均等部(室)または労働基準監督署に相談
  2. 申請書提出:交付要綱・様式に従って申請(設備投資・賃金引き上げの計画を記載)
  3. 交付決定:承認通知が届いてから設備導入・賃金引き上げを実施
  4. 事業完了:導入機器の納品・支払い完了
  5. 実績報告:領収書・賃金台帳等を提出
  6. 助成金支給

重要:交付決定前に発注・契約してはいけない。申請前に設備を発注・購入してしまうと助成対象外になる。先に申請→交付決定→発注というステップを守ることが絶対条件だ。

予算に注意——先着ではないが年度内消化

業務改善助成金は先着順ではないが、国の予算の範囲内で支給される。年度後半になると予算が枯渇し、新規受付が停止されるケースが過去にある。令和8年度も同様のリスクがあるため、申請を検討するなら早期(4〜6月)がベターだ。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。官公庁サイト等はページ構成の変更によりリンク切れが発生する場合があります。リンク切れの際は、発行元サイトのトップページから該当情報を検索してください。

※ 助成上限額・助成率等は年度ごとに変更される場合があります。申請の際は必ず厚生労働省または管轄の労働局に最新情報をご確認ください。


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