夜間対応型訪問介護廃止へ 2027年移行で事業者が今動くべき3つの理由

水曜の朝9時、都内のある訪問介護ステーション。
A管理者のスマホに1本のニュースアラートが届いた。「夜間対応型訪問介護、廃止へ——政府が介護保険法改正案を国会提出」。
その一行を見た瞬間、私への問い合わせ電話が午前中だけで3本入った。 「聞いたことはあるけれど、うちに関係あるのか分からない」——正直、こう言う現場の方が多い。だから今日は、その疑問に真っ直ぐ答えたい。 2026年3月、政府は第221回通常国会に「社会福祉法等の一部を改正する法律案」を提出した。この法案の柱のひとつが、夜間対応型訪問介護の廃止と、定期巡回・随時対応型訪問介護看護への統合だ。法案が成立すれば、廃止は2027年度を目途に実施される見込みとされている(介護ニュースJoint、2026年4月7日)。 まだ法案の段階だ。しかし「成立してから考える」では遅い——その理由を、順を追って説明する。

「廃止」の前に知っておくべき、2つのサービスの中身の違い

夜間対応型訪問介護と定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、名称こそ似ているが、仕組みはかなり異なる。ここを理解しないと、「統合」の意味が見えてこない。 夜間対応型訪問介護は、主に夜間帯(概ね22時〜翌6時)に特化した訪問サービスだ。定期的に巡回する「定期巡回訪問」と、緊急コールに対応する「随時訪問」の2種類を組み合わせて提供する。スタッフは介護職員が中心で、看護機能は含まれない。小規模・夜間専業での運営がしやすい設計になっていた。 定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、24時間365日対応を前提とした、訪問介護と訪問看護を一体的に提供するサービスだ。同一事業所に看護職員を配置するか、連携する訪問看護ステーションを確保する必要がある。
  • 対応時間帯:夜間対応型は夜間限定 / 定期巡回は24時間
  • 看護機能:夜間対応型は訪問介護のみ / 定期巡回は介護+看護の一体提供
  • 体制規模:夜間対応型は比較的小規模での運営が可能 / 定期巡回は24時間対応が前提
「統合」は単純な名称変更ではない。夜間専業だった事業者が、昼間を含む24時間体制と看護機能の確保を求められる可能性を意味する。では、スケジュールはどう動いていくのか——次が本題だ。

「まだ法案」で止まっていると、2027年に詰む3つのパターン

法案提出段階では、廃止の具体的なスケジュールと経過措置の内容は「2027年の介護報酬改定議論の中で決定される見通し」とされている(介護ニュースJoint、2026年4月7日)。経過措置があるとはいえ、詰むパターンはもう見えている。 パターン①「法案が通ったら考えればいい」と動かない事業者 報酬改定の議論は、法案成立後すぐに動き始める。人員確保・事業計画・利用者への説明を「成立後」から着手すると、施行までに間に合わない。採用には最低でも数か月かかる。教育・定着にはさらに時間がかかる。「動いた瞬間にスタートラインに立てる」状態を今から作っておかないと、報酬改定の細部が固まった段階でもう詰んでいる。 パターン②「看護師を1人雇えば解決する」という思い込み 定期巡回・随時対応型は24時間対応が前提だ。夜間対応型の人員規模のまま昼間の体制を積み上げると、人件費が事業計画を超える可能性がある。先に財務試算をせずに動き出すと、移行途中で資金が底をつく。採用を始める前に、「どの規模で定期巡回を運営するのか」「訪問看護と連携するのか、内製するのか」の方向性を決めることが先決だ。 パターン③「廃業しかない」と分かっているのに動かない事業者 廃業を選ぶこと自体は判断として正しい場合がある。問題は「決めたのに動かない」ことだ。利用者の移行先の確保、職員の雇用の着地、廃業届の手続き——これらすべてに時間がかかる。廃業と決めたなら、今期中に動かないと利用者・職員双方に迷惑がかかる。 3つのどのパターンに自分が近いかを確認した上で、次のアクションに移ってほしい。

今期中に終わらせる、3つの具体的なアクション

① 利用者の「夜間対応の実態」を数値で把握する 現在の利用者が1か月で夜間の随時対応を何回使っているか、記録から集計する。その上で、定期巡回・随時対応型に移行した場合に、利用者が受けるサービスの内容・頻度がどう変わるかをシミュレーションしておく。 利用者への説明は早いほどいい。「うちの施設は制度の動きを先に教えてくれる」という実績が、長期的な信頼になる。制度が変わってから慌てて伝える事業者と、どちらに安心して任せられるか——利用者は正直だ。 ② 訪問看護ステーションとのパイプを今から作る 看護機能を自社で内製するか、外部の訪問看護ステーションと連携するか——どちらの方向でも、今から動かないと遅い。地域の訪問看護ステーションとの関係構築は、一朝一夕では進まない。「いざとなれば連携できる先がある」という状態を作っておくだけで、移行時の選択肢がひとつ増える。 うちのクライアントで定期巡回・随時対応型に移行した訪問介護事業者は、ほぼ全員、移行の1年以上前から訪問看護ステーションとの関係を作り始めていた。この準備の有無が、移行時の苦労の差に直結した。 ③ 事業継続・縮小・廃業の試算を今期中に行う 現在の規模・人員・手元資金の3軸で、移行後の事業継続が可能かどうかを試算する。「継続困難」という結論が出るなら、利用者移行・職員処遇・廃業手続きの準備を早めに始めた方が、関わる全員の損失を最小化できる。 廃業は失敗ではない。利用者を路頭に迷わせない形で撤退することが、経営者の最後の仕事だ。

夜間対応型廃止は、訪問介護の「集約化」の始まりに過ぎない

今回の法案には、夜間対応型訪問介護廃止だけでなく、ケアマネジャー資格の更新制廃止なども盛り込まれている。この法案が示す方向性は明確だ。小規模・単機能のサービスを整理・統合し、24時間一体型の提供体制に集約する——というベクトルが、介護制度全体の軸になっていく。 今回の夜間対応型訪問介護は、その流れの最初の大きな「整理」に位置づけられる。次に何が来るかは、今の給付費分科会の議論を追っていれば、ある程度見えてくる。 私がいま見ている現場では、「来てから考える」事業者と「来る前に準備する」事業者の間に、じわじわと格差が生まれ始めている。3年後に大きく差がつくのは、いつも後者だ。 今動くか、後で詰むか——それだけの話だと思っている。

出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の詳細・最新情報は各公式サイトをご確認ください。


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