2026年6月施行・障害福祉報酬改定——新規開設の損得と処遇改善加算の変更点

もし放課後等デイサービスや就労継続支援B型の新規開設を今年度中に計画しているなら、いますぐ開設予定日を確認した方がいい。令和8年6月1日以降に指定を受けた事業所は、基本報酬が自動的に引き下げられる。対象サービスの事業者にとって、6月は「損益分岐点が動く日」だ。

なぜ3年サイクル外で、今年「臨時改定」が入ったのか

障害福祉サービスの報酬改定は、介護報酬と同じく原則3年に1度のサイクルで行われる。次の定期改定は令和9年度のはずだった。それが、令和8年度という「サイクル外」のタイミングで動いた。

理由は2つある。

1つ目は、障害福祉職員の賃上げを早期に実現するためだ。政府は令和6年以降、医療・介護・障害福祉・保育の各分野で継続的な賃上げを打ち出してきた。令和6年の介護報酬改定でも処遇改善加算が大幅に組み直されたが、障害福祉分野では「まだ不十分」という現場の声が続いていた。

2つ目は、事業所数が急増したサービスへの費用抑制だ。放課後等デイサービスや就労継続支援B型、グループホームは近年、参入が容易なサービスとして事業者数が急増した。その結果、障害福祉給付費の総額が想定を超えるペースで膨らみ続けている。厚生労働省はこれを「費用の急増」と表現し、「臨時応急的な見直し」として期中改定に踏み切った。

「3年に1度だから大丈夫」という感覚で来年まで待っていた事業者は、今すぐ認識を切り替える必要がある。


4月と6月、どちらが経営に響くか——2段階施行の落とし穴

令和8年度の改定は、4月1日施行と6月1日施行の2段階で実施される。これが事業者の混乱を生んでいる。

4月1日施行分は主に加算の体系整理だ。就労移行支援体制加算の適正化などが含まれる。すでに令和8年4月1日を過ぎているため、現時点では施行済みの内容だ。

問題は6月1日施行分にある。ここに2つの大きな変化が集中している。

  1. 新規事業所への基本報酬引き下げ(後述)
  2. 処遇改善加算の抜本的な拡充(後述)

6月1日まで残り約7週間。この2つを理解していない状態で6月を迎えると、どちらの意味でも損をする。新規開設ではコスト計算がずれ、既存事業所では取れるはずの加算を取り逃す。


6月以降の新規開設に「見えない減額」がある——4つのサービスの落とし穴

令和8年6月1日以降に新たに指定を受けた事業所は、以下の4サービスについて基本報酬が自動的に引き下げられる

  • 就労継続支援B型
  • 共同生活援助(グループホーム):日中サービス支援型・介護サービス包括型
  • 児童発達支援
  • 放課後等デイサービス

引き下げ幅は、厚生労働省の告示によれば以下の通りだ。

  • 就労継続支援B型:所定単位数×984/1000(約1.6%減)
  • 放課後等デイサービス:所定単位数×982/1000(約1.8%減)
  • グループホーム・児童発達支援:同様の係数による調整

「1〜2%程度なら大した影響じゃない」と思ったなら、少し待ってほしい。

たとえば放課後等デイサービスで、月の請求単位数が20万単位(1単位10円換算で200万円規模)の事業所を想定すると、年間でざっと40万円以上の差になる。開業初年度から毎年この差が続く。開設前に作った収支計画がすでに狂っている、という話だ。

ただし、すべての新規事業所が対象というわけではない。以下は引き下げの対象外となる配慮措置が取られている。

  • 離島・中山間地域に所在する事業所
  • 医療的ケア児者など重度障害児者への支援を主に行う事業所
  • 自治体が公募等により設置を認めた事業所

自社の開設地域や支援対象者の属性によって、適用されるかどうかが変わる。「うちは関係ない」と判断する前に、指定申請書類と照合することが必要だ。


既存事業所が今すぐ動くべき理由——処遇改善加算「拡充」の本当の中身

新規開設のリスクばかり語ってきたが、令和8年6月の改定には既存事業所にとってプラスになる変化もある。処遇改善加算の抜本的な見直しだ。

こども家庭庁の公式資料によると、6月施行の処遇改善加算改定の骨格は次の通りだ。

①全障害福祉従事者への賃上げ(月1万円相当)
加算率ベースで月額1万円(約3.3%)の賃上げを実現する水準に拡充される。介護分野との整合を取りながら、障害福祉全体の賃金底上げを図る内容だ。

②生産性向上等に取り組む事業者への上乗せ(月3,000円)
職場環境等要件として「生産性向上に向けた取組を5つ以上実施」などの条件を満たすと、福祉・介護職員に月3,000円の上乗せが受けられる。スマートフォン・タブレット等の導入と、現場課題の見える化の2つは必須要件とされている。

③計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援への新設(加算率5.1%)
これまで処遇改善加算の対象外だった相談系サービスにも、今回から加算が新設される。相談支援専門員を抱える事業所は要チェックだ。

処遇改善加算は申請しなければ1円も入らない。指定権者(都道府県・政令市・中核市)への計画書提出期限は、6月1日施行に先行して設定されることが多い。今から計画書の作成に着手しないと、6月の施行日に間に合わない。


6月1日まで残り7週間——今月やるべき3つのアクション

整理すると、令和8年6月の改定には「新規開設予定者」と「既存事業所」でまったく異なるアクションが求められる。

【新規開設予定の事業者】

  1. 開設日の再検討:6月1日以降の指定取得になるかどうかを確認する。指定申請のタイミングと自治体の処理期間次第で、5月中の指定取得が可能かどうかが変わる
  2. 収支計画の見直し:基本報酬に引き下げ係数をかけた数字で、初年度の収支計画を再計算する
  3. 配慮措置の確認:対象外となる条件(重度障害児者支援など)に自社が該当するかを指定権者に確認する

【既存事業所の管理者・事務長】

  1. 処遇改善加算の計画書作成:6月1日施行分の加算を取るには、5月末までに指定権者へ計画書を提出する必要がある(自治体によって締切が異なるため早急に確認)
  2. 上位区分の要件チェック:生産性向上取組の5要件を満たせるか確認する。スマートフォン・タブレット導入と課題の見える化は必須
  3. 相談支援事業を行っている場合:新設加算(5.1%)の申請手続きを別途確認する

「6月になってから考える」では遅い。処遇改善加算の申請は事前申請が原則で、施行日を過ぎてから遡及して取れるものではない。

うちのクライアントの事業者でも、「計画書の存在を知らなかった」という話を毎年聞く。制度は知っていても、提出書類と締切をセットで把握している人は意外と少ない。今月中に動けるかどうかで、来年度末の累計収益に差がつく。それだけの話だ。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の詳細については指定権者(都道府県・政令市・中核市)にご確認ください。


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