処遇改善加算の計画書は来週が締切——6月改定確定で動くべき3点
「計画書、もう出しましたか?」——介護施設のA理事長からLINEが届いたのは、新年度予算が成立した翌朝だった。正直、こちらも慌てた。4月15日まで、あと6日しかない。
私がクライアントと一緒に毎年冷や汗をかく書類の一つが、処遇改善加算の計画書だ。6月から介護報酬が引き上げになること自体は業界中に届いているが、「計画書を今月中に出す」という認識がまだ薄い。焦り始めるのは14日の夜か、最悪15日の朝——という施設を、私はこれまで何件も見てきた。
今年は改定の中身も例年と違う。今日は具体的な提出期限と変更点を整理する。
計画書を出し忘れると何が起きるのか
まず最悪のシナリオから話しておく。
処遇改善加算は「計画書を提出してから算定できる」仕組みだ。計画書を出さなければ、6月分の加算を請求できない。算定できない分、職員への賃上げ財源も生まれない。当然、給与を上げる約束をしていた職員への説明も必要になる。
加算Ⅰ(最高区分)を取っている訪問介護事業所であれば、人件費の28.7%相当の収入が入ってくるはずの加算が、まるごと抜け落ちる。規模にもよるが、月数十万円から百万円を超える損失になる。
「申請を忘れた」は弁解にならない。提出期限は2026年4月15日(水)。今日4月9日(木)から数えると、残り6日間だ。
では、4月15日に間に合わなかった場合はどうなるか。「訪問看護」「訪問リハビリ」など今回の改定で処遇改善加算が新規設定されたサービスだけを運営する事業所には、別途6月15日という期限が設けられている。ただし、既存サービスを持つ事業所は4月15日が原則だ。
どちらのケースでも、期限は「余裕がある日程」ではない。今週中に動かなければ間に合わない施設も出てくる。
今回の改定で変わった最大のポイント——対象が「介護従事者」に広がった
2026年6月施行の介護報酬改定(令和8年度改定)で、処遇改善加算の中身が変わった。最も大きな変化は対象者の拡大だ。
これまでの処遇改善加算は、対象が「介護職員」に限られていた。今回の改定から「介護従事者」に広がり、看護師・PT・OT・STなどのリハビリ職、栄養士、社会福祉士といった職種も加算の配分対象に含められるようになった。
当然、計画書の「職種別配分計画」の記載内容も変わる。旧来の書式をそのまま流用しようとすると、整合性が取れなくなる。必ず今年度版の計画書様式を確認してから作成してほしい。
もう一つ変わったのは、処遇改善加算の新設サービスの追加だ。今回から訪問看護と訪問リハビリに処遇改善加算が新設された。これまで「うちは訪問看護だから関係ない」と思っていた事業者も、今回は計画書を出す必要がある。加算率は訪問看護で最高1.8%と小さいが、ゼロと1.8%では話が違う。
これだけの変更が重なっている。それでも提出期限は4月15日のままだ。何が変わったかを把握せずに計画書を出すと、後から修正を求められるリスクが生じる。
月1万円〜1万9千円の3階建て——あなたの施設はどの階に乗れるか
今回の改定で賃上げがどれだけできるのか。厚労省が示している目安は3段階になっている。
- 基本:月額1万円——すべての事業所が目指せるベース
- 生産性向上の取組をしている事業所:月額7千円の上乗せ(合計月1万7千円水準)
- 最大:月額1万9千円——定期昇給分も含めた積み上げ
「生産性向上の取組」とは、ケアプランデータ連携システムの導入、または処遇改善加算Ⅳ相当のキャリアパス要件・職場環境改善要件を満たすことが条件になる。具体的には「電子記録の活用」「業務手順書の整備」「委員会の設置」などだ。
正直に言う。「生産性向上の取組をしています」と書けるかどうかで、月7千円の差が出る。年間に換算すると8万4千円。10人の職員がいれば84万円だ。計画書の「職場環境等要件」欄をしっかり埋めることが、賃上げ額の上限を決める。
一方で、賃上げの原資はあくまでも加算として入ってくる報酬だ。計画書の段階では「予定する配分方法」を書く。6月以降、実際に加算が入ってきた後、実績報告書で実際の配分状況を証明する義務がある。計画と実績が乖離した場合は指導・返還の対象になりうるため、書ける範囲で計画を立てることが重要だ。
訪問介護28.7%、特養17.6%——加算率一覧と誤りやすい計算ミス
処遇改善加算は「基本報酬に対して何%か」という形で設定される。2026年6月施行の加算Ⅰ(最高区分)の率は以下のとおりだ(介護ニュースJoint、告示公布情報より)。
- 訪問介護:28.7%
- グループホーム:22.8%
- 特別養護老人ホーム:17.6%
- 通所介護:12.0%
- 居宅介護支援(新設):2.1%
- 訪問看護(新設):1.8%
うちのクライアントで多いのは「加算率を間違える」ミスだ。特に複数サービスを同一法人で運営している場合、サービスごとに加算率が異なるにもかかわらず、一つの率で計算してしまう。あるいは「旧加算の率のまま」で計算していた、というケースもあった。今回は訪問看護・訪問リハが新設されているため、従前の帳票を流用すると見落としが起きやすい。
計算式は「当月の基本報酬合計 × 加算率」だ。これが加算として請求できる上限額になる。加算Ⅱ・Ⅲを取る場合は率が変わる。自施設の取得区分と、それに対応する率を確認してから計画書を作成してほしい。
もう一つ誤りやすいのは「計画書に書く賃上げ額と実際の給与改定のタイミング」の整合性だ。計画書には「いつから、いくら上げるか」を書く。6月から加算が入るからといって、4月・5月の処遇が旧来のままで良いわけではない場合もある(補正予算による先行加算を受けている事業所は要確認)。処遇改善の流れ全体を一度整理してから計画書を書くことを勧める。
4月15日を乗り越えたら、次に備える「6月15日」と「7月調査」
4月15日の計画書提出が最初の山場だが、その後にも重要な日程が続く。
6月15日:訪問看護・訪問リハなど、今回新設のサービスのみ運営する事業所の計画書提出期限。複合サービスを展開している場合でも、新設サービスについて別途確認が必要なケースがある。
2026年7月:厚労省が「令和8年度介護従事者処遇状況等調査」の実施を発表した(2026年4月8日の介護給付費分科会・介護事業経営調査委員会で審議済み)。この調査は処遇改善加算の効果を把握するものだ。訪問看護・訪問リハが今回初めて調査対象に追加される。調査結果は11月頃に公表され、2027年度の介護報酬改定の議論に使われる。
つまり、今から加算を正しく取得し、配分実績を正確に記録しておかないと、7月の調査で「取得しているが賃上げに使えていない」という実態が浮き彫りになりかねない。それが次の改定議論に影響することは想像に難くない。
計画書を出すのはゴールではなく、スタートだ。どれだけ加算を実際の賃上げに結びつけられるかが、今後の採用力・定着率にも直結する。「加算は取れているが職員は辞めていく」という施設と、「加算をうまく使って時給を上げた結果、応募が増えた」という施設——この差は、計画書の段階からすでに生まれ始めている。
出典・参考情報
- 新年度予算が成立 介護報酬、6月から引き上げへ(介護ニュースJoint、確認日:2026年4月9日)
- 介護職の賃上げ調査を今夏実施 厚労省(介護ニュースJoint、確認日:2026年4月9日)
- 社会保障審議会 介護事業経営調査委員会 第44回(厚生労働省、確認日:2026年4月9日)
- 訪問介護に最大28.7%の処遇改善加算 告示公布(介護ニュースJoint、確認日:2026年4月9日)
- 計画書の提出期限は4月15日 新設ケアマネなどは6月まで(介護ニュースJoint、確認日:2026年4月9日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。最新の通知・告示は厚生労働省の公式サイトでご確認ください。
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