令和8年度介護報酬改定スタート——4月・6月・8月、施設が動くべき3つの実務対応

2026年4月1日、令和8年度介護報酬改定が施行された。改定率こそ小幅ではあるが、施設運営に直結する制度変更が複数重なっており、「何をいつまでに対応すればいいのか」が見えにくい。

4月の処遇改善加算の届出、6月から始まる人員欠如減算の猶予措置、8月の食費・居住費の引き上げ——この3点だけでも、それぞれ対応タイミングが異なる。経営者や管理者が今の時期に優先すべき実務の順番を、制度の中身とあわせて整理する。


令和8年度介護報酬改定の全体像——4月だけではない変化の波

今回の改定は「4月1日にすべてが変わる」わけではなく、段階的に制度変更が積み重なる構造になっている。まず大枠を確認しておきたい。

4月1日施行分:基本報酬の改定、算定基準の見直し、各種加算の要件変更が適用された。厚生労働省が公表している令和8年度介護報酬改定関連の告示・通知(令和8年厚生労働省告示第87号)に基づくもので、居宅サービス・施設サービスを問わず広く影響する。

6月1日施行予定:人員基準欠如減算の見直しなど、追加的な制度変更が予定されている。処遇改善加算に関する新様式(別紙様式2・3)も令和8年6月以降の加算算定に対応したものとなっており、6月から新たな届出が必要となる見込みだ。

8月1日施行:介護保険施設の食費・居住費の負担限度額が引き上げられる。対象は一定の所得がある「第3段階」の入所者で、入所者家族への説明対応が求められる。

この3段階の変化を念頭に置いた上で、今月から動くべき順に解説する。


【4月】処遇改善加算の届出——今月中に対応を

令和8年度も引き続き、介護職員等処遇改善加算の処遇改善計画書の提出が必要だ。提出先は各都道府県(または市区町村)で、締め切りは例年4月中旬が目安となっている。正確な提出期限は各都道府県から通知されているため、必ず管轄の行政窓口に確認してほしい。

今年度の手続き方針は厚生労働省から令和8年3月13日付け老発0313第6号として通知されており、様式例も公表されている。ただし、4月・5月分の計画書は旧様式に準拠し、6月以降の加算算定に係る様式は別途、新様式で届け出る必要がある点に注意が必要だ。

処遇改善加算を算定している事業所にとって、この届出は「うっかり忘れ」が許されない手続きのひとつ。届出が遅れると、その間の加算が算定できなくなるリスクがある。4月に入ったばかりの今、書類準備の状況を必ず確認しておきたい。

また、新年度に人員変更があった場合(管理者変更、サービス種別の追加など)は、それに伴う体制届の更新も並行して必要になる。届出書類が重なる時期でもあるため、担当者の作業量管理にも目を向けたい。


【6月】人員欠如減算に「3ヵ月の猶予」が生まれる

今年6月から、介護事業所・施設の経営にとって実務上の大きな変化が加わる。人員基準欠如減算に、一定条件下での猶予措置が設けられるのだ。

現行の人員基準欠如減算は、介護職員・看護職員・ケアマネジャーなどの配置数が基準を下回った場合に、原則として給付費が3割減算される厳しい仕組みだ。人手不足が深刻化する中、採用がうまくいかずに欠員が続いた場合、いきなり3割の収入減という事態が生じていた。

厚生労働省はこの見直しを3月30日の審議会(社会保障審議会介護給付費分科会)で示し、突発的・やむを得ない事情で欠員が生じた場合に、年1回に限り最大3ヵ月間(欠員発生月の翌々月まで)、減算の適用を猶予する特例措置を設けるとした(介護ニュースJoint、2026年3月30日)。

利用できる条件は以下のとおりだ。

  • ハローワーク等を通じて採用活動を行っていること(証明が必要となる可能性がある)
  • 既存職員に過度な負担がかからないよう、労働時間の管理や体制整備に努めること
  • 介護職員・看護職員が基準から1割を超えて減少している場合は対象外

この措置は医療の診療報酬における対応と歩調を合わせた形だ。「採用できるまでの間、事業が成り立たなくなる」という現場の声に応えた現実的な改正である。

ただし、この猶予措置はあくまでも「急な欠員への一時的な緩衝」であり、慢性的な人員不足の解決策ではない。猶予が明けた後も欠員が続く場合は、依然として減算の対象となる。採用強化や外部委託の活用など、根本的な人材確保戦略と並行して対応することが不可欠だ。


【8月】食費・居住費が上がる——入所者家族への説明は早めに

今年8月1日から、介護保険施設における入所者の食費・居住費の負担限度額が引き上げられる。対象は「第3段階」に分類される一定所得の入所者だ。

具体的な引き上げ額は以下のとおり(介護ニュースJoint、2026年3月23日)。

  • 第3段階①(世帯全員が市町村民税非課税・年金等収入82.65万円超〜120万円以下)
    食費:1日あたり30円増(月約1,000円増)
  • 第3段階②(世帯全員が市町村民税非課税・年金等収入120万円超)
    食費:1日あたり60円増(月約2,000円増)、居住費:1日あたり100円増(月約3,000円増)

金額としては「1日60円・100円」と聞けば小さく思えるかもしれないが、月単位では2,000〜5,000円の負担増になる。入所者本人・家族にとっては無視できない変化だ。

施設側が今すぐ取り組むべきことは、対象となる入所者の洗い出しと、説明文書の準備だ。8月直前に慌てて対応するのではなく、5〜6月のうちに丁寧な説明の場を設けることが、入所者・家族との信頼関係維持につながる。

告示は2026年3月13日に公布されており、制度変更の根拠は明確だ。施設として公式な文書で「この制度変更を受けて」と説明する姿勢が、現場の混乱を防ぐ。


今後の見通し——2027年度に向けた人材戦略の布石も

少し先の話になるが、2027年4月には介護職員初任者研修のオンライン受講が正式に解禁される予定だ(厚生労働省方針、2026年3月31日通知)。コロナ禍の特例として認められていたオンライン対応が、恒久的なルールに切り替わる。実技・演習は引き続き対面必須だが、座学部分の受講形態が大幅に弾力化される。

採用・育成のハードルが下がることで、資格取得を支援しやすい環境が整う。研修受講費用の補助制度(キャリアアップ助成金等)と組み合わせることで、採用・定着の取り組みをより戦略的に進められるようになるだろう。


4月の今、管理者がチェックすべきこと

結局のところ、令和8年度の改定は「4月1日に完了」ではなく、8月まで段階的に実施される一連の変化だ。施設運営者として今月中に確認しておくべき事項を整理すると、以下の3点に絞られる。

  1. 処遇改善加算の計画書提出:都道府県への締め切りを確認し、書類を早急に整える
  2. 6月からの人員欠如減算緩和への準備:欠員リスクがある場合、採用活動の記録整備と既存職員の負担管理を進める
  3. 食費・居住費引き上げの説明準備:対象入所者の把握と、家族向け説明文書の草案作成に着手する

どれも「8月になってから動けばいい」では間に合わない。改定対応の遅れは収入の減少や利用者との関係悪化に直結する。今月の運営会議のアジェンダに、この3点を必ず入れてほしい。


出典・参考情報

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