令和8年度保育公定価格改定——安全計画なしで7月を迎えると詰む

結論から書く。令和8年度の保育公定価格改定は、「人件費が上がった」という話だけでは終わらない。令和8年7月分の給付費から、安全計画の策定・実施状況によって給付費を減らされる仕組みが動き出す。 こども家庭庁がこの仕組みを告示に盛り込んだのは、令和8年4月8日。つまり今から4日前だ。気づいていない保育施設の経営者が、まだかなりいると思う。

「静かに出た」——4月8日の告示で何が変わったか

こども家庭庁告示第9号が発令されたのは令和8年4月8日。子ども・子育て支援制度のページに掲載された令和8年度公定価格・基準等の見直し事項概要資料には、今年度の改定の全貌がまとめられている。 人件費の引き上げはもちろんある。これは国家公務員給与に連動した措置で、毎年の定例改定の一部だ。私が保育施設の経営者に会うと、「今年も少し上がりましたよね」という認識を持っている方は多い。ただ、ここで話が終わってしまっているケースが多い。 今回の改定で新たに加わったのは、大きく2点だ。
  • 安全計画の未策定・不実施に対する減算の新設(令和8年7月分給付費から適用)
  • 保育ICT推進加算の新設(令和8年度中に要件を満たした施設が対象)
「加算が増えた」だけではなく、「要件を満たさないと減らされる」という仕組みが今回は同時に走っている。これが今回の改定で、私が最も気になっているところだ。

安全計画がない施設が7月に直面するもの

こども家庭庁の公定価格制度ページで確認できるとおり、令和8年7月分給付費から「安全計画の策定等を行っていない場合の減算」が適用される。 安全計画は、令和5年(2023年)の児童福祉法改正によって保育所・認定こども園等に策定が義務付けられた書類だ。簡単に言えば、「子どもの安全を守るための計画書」で、次のような内容を盛り込む必要がある。
  • 施設内での事故防止に向けた取り組み
  • 年間を通じた安全に関する研修・訓練の計画と実施記録
  • 危険箇所の定期点検とその記録
法的義務があるとはいえ、「策定は済んでいるが、運用記録をきちんと残していない」「年間計画は作ったが研修を実施していない」という施設が、実際に少なくない。うちのクライアントで保育施設を運営している方と話すと、「とりあえず書類は作ったけど、実施記録まではちゃんとできていない」という声はよく聞く。 問題は、こうした「形だけ策定している」状態が今後どう扱われるか、だ。こども家庭庁の概要資料では「策定等を行っていない場合」と表現されており、単発の訓練抜けで即座に発動するものではないとされている。ただ、「年間を通じて研修・訓練がほぼゼロ」という状態は危うい。 7月に間に合わせるには、今月中に現状確認をするしかない。 では、次は「加算」の話を見てみよう。これが経営的には二重にポジティブな話になる施設と、完全にスルーしてしまう施設に分かれる。

保育ICT推進加算——要件を知っているか

今回の改定で新設された保育ICT推進加算は、保育業務へのICT活用を一定の水準で進めている施設に対して年1回の一括給付を行うものだ。 こども家庭庁の概要資料(PDF)で示された要件は次のとおり:
  1. ICT活用責任者の設置:施設内でICT推進の担当者を定めること
  2. 複数機能のICTを業務に組み込んで活用:記録・連絡・シフト管理などの複数業務でICTを実際に使っていること
  3. 国の2システムとの連携:「保育業務施設管理プラットフォーム」「保活情報連携基盤」を活用していること
給付のタイミングは年1回、3月時点の利用児童数をベースに一括給付される形だ。また、ICT化推進補助事業を利用した年度は算定できない(重複防止)。 これを聞いてピンときた方は、すでに保育ICTが動いている施設だと思う。一方で、「保育業務施設管理プラットフォームとは何か」と思った方は、おそらく今年度はこの加算の対象外になる可能性が高い。 3つの要件のうち、特にハードルになりやすいのが国の2システムとの連携だ。導入自体はこども家庭庁が推進してきた話なので、「聞いたことはある」という施設も多いと思う。ただ、「実際に使っている」状態まで整備できているかどうかが、今後の加算算定の分かれ目になる。

今月中にやること3つ

告示が4月8日に出て、7月から減算が動き出す。残り2か月半ほどで何ができるかを整理すると、優先度は次の順番だと私は思う。 ① 安全計画の現状確認と記録の点検 まず「計画書はあるか」を確認し、次に「今年度の研修・訓練の実施記録があるか」を確認する。計画書が古い(前年度以前のまま更新されていない)場合は、今年度版に差し替える必要がある。記録がない場合は、第1回の研修・訓練を今月中に実施して記録に残すことで、「年間実施ゼロ」という状態を回避できる。 ② 保育ICT推進加算の要件確認 すでに保育ソフト・連絡帳アプリ等を導入している施設は、国の2システムとの接続状況を確認してほしい。来年度以降の算定を視野に入れるなら、今年度中に要件を整備しておく価値がある。 ③ 公定価格FAQ第30版を読む こども家庭庁が令和8年4月10日に更新した公定価格に関するFAQ(第30版)は、改定に関する疑問点がQ&A形式で整理されている。今回の改定について「うちの施設ではどう扱われるのか」という疑問は、まずここを確認するのが一番早い。 診療報酬や介護報酬の改定は業界メディアが大きく取り上げるが、保育の公定価格改定は「静かに出て、気づいたら変わっていた」というケースが毎年繰り返される。告示が出た週に動ける施設と、夏になって「減算されている」と気づく施設では、同じ制度のなかで受け取れる金額が変わってくる。 それだけの話だ。

出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。こども家庭庁の公式サイトのURL変更等により、リンク先に接続できない場合があります。


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