有効求人倍率14倍超——6月処遇改善加算拡充で介護採用は変わるか

14.14倍。これが訪問介護員の有効求人倍率の現実だ。 全職種平均の1.03倍と並べると、もはや比較の意味すら消えてしまう数字になる。 2026年6月、処遇改善加算の臨時拡充が施行される。「賃金を上げれば人は来る」——本当にそうなのか、実際に動いた施設と動かなかった施設を見ながら考えてみたい。

有効求人倍率14倍は、なぜ「介護全体の問題」じゃないのか

介護施設のA理事長から「採用できません」と最初に相談を受けたのは、5年以上前のことだ。当時の私は「そうですよね」と相槌を打つだけだった。 今は、その数字の重さが違う。 厚生労働省が社会保障審議会に提出したデータ(確認日:2026年4月10日)によると、2023年度の訪問介護員の有効求人倍率は14.14倍。介護サービス全体でも3.97倍で、全職種平均1.03倍の約4倍だ。 ここで押さえておきたいのは、「介護全体」が同じように苦しいわけではない、という点だ。施設系(特養・老健・グループホーム)と訪問系(訪問介護・訪問看護)では採用の難易度がまるで違う。訪問介護の求人倍率が14倍を超えているのは、「1人で利用者宅に向かう」という業務特性と、相対的に低い報酬水準が重なっているからで、施設介護の採用難とは性質が異なる。 あなたの施設が訪問系なら、今すぐ別の手を打つ必要がある。施設系でも油断はできない。同資料では、2040年には介護人材が全国で57万人不足すると推計されている。 「では6月の処遇改善加算拡充で、この数字は動くのか」——それが今日の本題だ。

6月から月1万円上がる——それだけで本当に応募は来るのか

2026年6月1日、介護報酬の臨時改定が施行される。 社会保障審議会・介護給付費分科会で正式決定した内容(確認日:2026年4月10日)のポイントは次の通りだ。
  • 全介護従事者を対象に月1万円相当(3.3%)の賃上げ
  • 生産性向上に取り組む事業者は月7,000円の上乗せ
  • 定期昇給(定昇)込みで最大月19,000円の賃上げを目指す設計
  • 訪問介護では加算I「ロ」が28.7%(従来比+4.2ポイント)に拡充
改定の詳細解説(CBH)(確認日:2026年4月10日)によれば、この拡充は「処遇改善加算I」を取得している事業所が最大のメリットを受ける設計になっている。加算IIやIII止まりの事業所では恩恵が薄い。 賃金が上がるのは確かだ。ただ問題は、「賃金が上がったこと」が求職者に届くかどうか、にある。 私が複数の施設と話してきた感触では、処遇改善加算を満額取得しながらも「採用できない」と言い続けている施設がある。一方で、加算取得額はほぼ同じなのに応募が増えている施設もある。差はどこにあるのか。

賃金を上げた施設と変わらなかった施設——たった1つの差

うちのクライアントの一人に、処遇改善加算を3年連続で満額取得しながら「採用できない」と言い続けていた訪問介護ステーションのDさんがいる。 話を深掘りして、問題が見えてきた。賃金は確かに上がっていた。でも「上がっている」という事実が、求職者に届いていなかった。 採用ページの給与欄には「基本給〇〇円〜」とだけ書かれていて、処遇改善加算の金額が一切見えない。面接でもほぼ触れない。採用担当者が「賃金のことは面接で詳しく話す」と思い込んでいたのだ。 一方、採用が改善した施設に共通していたのは、加算額を含めた「実質月収」を求人原稿の1行目に書いていたこと。「月給22万円(処遇改善加算込み月2.7万円含む)」という形で可視化するだけで応募数が変わった事例を、私は複数見ている。 賃金という武器は最初から持っていた。使い方を知らなかっただけだ。 6月施行まで2カ月を切った今、何から手をつければいいか。

処遇改善加算フル取得×採用強化——今週から動ける3つのアクション

  1. 加算取得区分の確認と上位区分への移行準備
    今回の拡充は「加算I取得事業所」が最大の恩恵を受ける設計だ。加算IIやIII止まりの事業所は、まず上位区分への移行要件を確認しておく。厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」(確認日:2026年4月10日)に要件表が公開されている。移行には計画書の提出が必要で、締切はすでに動き出している。
  2. 求人原稿を「実質月収表記」に切り替える
    6月施行と同時に、IndeedやHello Workの原稿に「処遇改善加算込みの実質月収」を1行目に書く。求職者が見ているのは基本給ではなく手取りに近い数字だ。ここを変えるだけで問い合わせ率が変わる施設を何件も見てきた。今すぐ原稿の改稿スケジュールを6月1日に合わせて入れておく。
  3. 在職スタッフへの「先行周知」で離職を止める
    採用より先に、今いる人を失わない。「6月から確実に上がります」と今から在職者に伝えておくだけで、転職活動を中断するスタッフが出てくる。採用費ゼロの離職対策だ。全体朝礼でもチャットでも1分で済む。
3つとも、今週中に着手できる話だ。 2040年に57万人が不足するという推計が本当だとすれば、動いた施設だけが先回りできる。処遇改善加算の拡充は、採用戦略を変える最初の一手になる。あなたの施設は、今年の6月に何を変えるか。

出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度改定により内容が変更される場合があります。最新情報は各省庁の公式サイトをご確認ください。


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