令和8年度歯科診療報酬改定——届出を検討したい4つの新設加算
「加算があることは知っていたけれど、どうせ手間がかかるだろうと後回しにしていた」——そう言いながら、気づいたら6月を過ぎていた、という歯科医院は毎改定サイクルに必ず出てくる。
令和8年度診療報酬改定(歯科・本体施行:2026年6月1日)では、今回新たに4つの点数・加算が新設された。電子的歯科診療情報連携体制整備加算、特別管理加算(歯科疾患管理料)、口腔機能実地指導料、歯科技工所ベースアップ支援料だ。いずれも「自院には関係ない」と読み飛ばす前に、一度施設基準と算定要件を確認してほしい。今月中に動ける院長と、9月になってから慌てる院長では、収益の数字に差がつく。
電子的歯科診療情報連携体制整備加算——初診で最大9点、要件は段階的に選べる
今改定で旧「医療DX推進体制整備加算(歯科)」と「医療情報取得加算」が廃止・再編され、歯科専用の新加算として「電子的歯科診療情報連携体制整備加算」が新設された。
点数
- 初診時(月1回):加算1=9点 / 加算2=4点
- 再診時(月1回):2点(加算1・2共通)
算定要件——2段階構成で、加算2から着手できる
加算1・加算2 共通要件(7項目)
- オンライン請求を行っていること
- 診療報酬明細書を患者に無償で交付していること
- オンライン資格確認(マイナ保険証)体制を有していること
- オンライン資格確認システムで取得した診療情報を診察室等で閲覧・活用できる体制があること
- マイナ保険証利用率が30%以上であること
- マイナポータルの医療情報をもとにした患者の健康管理相談に応じる体制があること
- 明細書発行・医療DX推進に関する事項を院内掲示およびウェブサイトに掲載していること
加算1のみ追加要件(3項目のうち一定数充足)
- 電子処方箋の発行体制があること
- 安全管理ガイドラインに準拠した電子カルテを使用していること
- 電子カルテ情報共有サービスへの参加または地域の歯科医師会・医師会との情報連携ネットワークへの参加
すでにオンライン請求・オンライン資格確認を稼働させている歯科医院であれば、加算2の7項目はほぼ満たしている可能性が高い。まず加算2で届け出て、電子カルテや電子処方箋の整備が整い次第、加算1へ切り替えるという段階的アプローチが現実的だ。
口腔機能実地指導料(46点)——歯科衛生士の「加算」から独立区分に格上げ
これまで「歯科衛生実地指導料の口腔機能指導加算」として算定されていた項目が、今改定で独立区分「口腔機能実地指導料(46点)」として格上げされた。口腔機能発達不全症・口腔機能低下症の患者に対して、研修を修了した歯科衛生士が主治医の指示のもとで実地指導を行う体制を評価するものだ。
点数・算定頻度
- 46点(月1回に限り算定)
算定要件
- 口腔機能発達不全症または口腔機能低下症を有する患者が対象
- 口腔機能に係る研修を受講した歯科衛生士が、主治の歯科医師の指示を受けて指導を実施
- 指導内容を文書で患者に提供すること(初回は必須、以降は指導内容の変化や改善が見られない場合に随時実施、6ヵ月に1回以上は文書提供)
施設基準・届出
- 口腔機能発達不全症および口腔機能低下症(在宅・施設療養患者への対応含む)の研修を受講した歯科衛生士を1名以上配置(1年間の経過措置あり)
- 実地指導を実施する時間を定め、専用の歯科用ユニットを確保していること
- 当該指導を担当する歯科衛生士の処遇改善に係る取組を行っていること
口腔機能管理に力を入れている歯科医院では、歯科衛生士が既にこの研修を受講している場合も多い。独立区分への格上げにより算定の実績集計・管理がしやすくなるため、既存の体制を活かして届け出ができるかどうかを今すぐ確認する価値がある。
特別管理加算(歯科疾患管理料・80点)——障害者歯科診療に特化した専門医院向け
今改定で歯科疾患管理料(B000-4)の加算として新設(80点)。脳性麻痺・知的発達障害・重症呼吸器疾患・人工呼吸器使用・強度行動障害などの患者に対し、専門的な歯科医学的管理を行う体制を評価する加算だ。
対象患者(5区分)
- 脳性麻痺等で身体の不随意運動や緊張が強く、体幹の安定が得られない状態
- 知的発達障害等により開口保持ができない、または治療目的の理解・協力が得られない状態
- 重症の呼吸器疾患等で治療中に頻繁な中断が必要な状態
- 人工呼吸器使用中または気管切開を行っており、歯科治療に際して医学的管理が必要な状態
- 強度行動障害であって日常生活に支障を来す症状・行動が頻繁に見られ、治療協力が得られない状態
主な施設基準
- 障害者歯科治療に関する専門知識および5年以上の臨床経験・60症例以上を有する歯科医師を1名以上配置
- 障害を有する患者への歯科診療補助を60症例以上経験した歯科衛生士を1名以上配置
- 障害者歯科診療を実施する時間を定め、専用の歯科用ユニットを確保
- パルスオキシメーター・血圧計等の医療機器を整備
- 都道府県等との連携(診療所の場合は歯科標榜病院との連携体制)
この加算は、障害者歯科診療に特化した体制を持つ医院向けの設計だ。症例数・経験年数の要件があるため、すべての歯科医院が対象になるわけではない。ただし、地域で障害者歯科の受け皿になっている医院や、連携先として機能している医院は、一度自院の体制と照らし合わせてみてほしい。
歯科技工所ベースアップ支援料(15点)——委託先の技工所の賃上げを「点数」で支援する仕組み
今改定でもっとも新しい発想の点数がこれだ。歯科技工所に在籍する歯科技工士をベースアップ評価料の対象に追加するにあたり、保険医療機関(歯科医院)が委託先の技工所の賃上げを後方支援するための仕組みとして新設された。
点数
- 15点(1装置につき、令和8年6月〜)
- 令和9年6月以降は所定点数の200%=30点で算定
算定要件
- 歯科医師から交付された歯科技工指示書に基づき、外部の歯科技工所に補綴物等の製作を委託した場合に算定(院内技工士が製作・修理する場合は算定不可)
- 装着時(M005またはN008)に合わせて算定(支台築造・暫間歯冠補綴装置・3次元プリント有床義歯等は各区分の算定日に算定)
届出内容・施設基準
- 委託している歯科技工所名を届け出ること
- 毎年8月に実績報告が必要
- 当該歯科技工所が賃金改善の意向を有する場合に連携の上で届出を行い、支援料の全額を技工所への委託費増額に充てること
外部技工所に補綴物を委託している歯科医院では、技工所との協議・合意を経て届け出ることで、1装置あたり15点(令和9年以降は30点)が算定できる。点数の全額が委託費の増額に充てられるため、医院のキャッシュフローには直接の改善はないが、技工所との関係強化と地域の歯科技工士確保という観点からは積極的に活用を検討したい。
4〜5月が本番——今月中に動けるかどうかが6月の収益を決める
4つの加算・支援料に共通するのは、「6月1日の施行までに届出が受理されている必要がある」という点だ。施設基準の確認・書類整備・地方厚生局への提出には最低でも2〜4週間のリードタイムが必要になる。
特に今改定からは施設基準の電子申請対象が拡大されており、手続きの経路を確認しながら進める必要がある。「院長1人で全部やる」という体制では、日常診療と届出準備を並行して回しきれないケースも出てくる。
届出書類の整理・作成・提出のサポート、施設基準の充足確認、給与改善計画の文書化は、外部の専門サービスを活用することで確実に進めることができる。今月中に確認・着手できるかどうかが、6月以降の算定実績に直結する。
出典・参考情報
- 令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】(令和8年3月5日版)(厚生労働省保険局医療課、確認日:2026年4月7日)
- 令和8年度診療報酬改定説明資料等について(厚生労働省、確認日:2026年4月7日)
- 令和8年度診療報酬改定について(告示・通知)(厚生労働省、確認日:2026年4月7日)
※ 本記事の算定要件・施設基準は上記概要資料をもとに記載しています。詳細および最終確認は厚生労働省が正式発出した告示・通知をご参照ください。リンク切れの際は発行元サイトのトップページから検索してください。
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