ケアマネ更新制が廃止へ——介護保険法改正案で施設に生じる3つの新義務
4月3日、政府は「社会福祉法等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、第221回国会に提出した。介護保険法、社会福祉法、老人福祉法、障害者総合支援法など複数の法律が一括して改正される規模の大きな法案だ。施行は原則として令和9年(2027年)4月1日だが、事業者への影響は今から備えなければ間に合わない内容が含まれている。
なかでも注目すべきは3点——ケアマネジャーの更新制廃止と研修義務化、事業者への新たな義務、そして有料老人ホームを対象とした登録制度の創設だ。
今国会に提出された改正案——施行は2027年4月が原則
法案が閣議決定されたのは、今年度スタートの節目となる4月3日。介護ニュースJointの報道によれば、政府は今国会での早期成立を目指している。
改正の背景には、超高齢社会と急速な人口減少という構造的課題がある。持続可能な介護提供体制を保つため、制度の枠組みそのものを再設計する転換点と位置づけられている。主な改正内容と施行スケジュールは以下のとおりだ。
| 改正内容 | 施行時期 |
|---|---|
| 特定地域サービス創設・夜間対応型訪問介護廃止など | 令和9年4月1日(2027年4月) |
| ケアマネ更新制廃止・研修義務化・事業者の研修機会確保義務 | 公布後1年半以内の政令で定める日 |
| 有料老人ホームの登録制度・登録施設介護支援の創設 | 公布後3年以内の政令で定める日 |
「原則2027年4月施行だから1年ある」と受け止めてはいけない。特にケアマネ関連の改正は「公布後1年半以内」とされており、法案が今国会で成立すれば、2027年内には施行される可能性が高い。施設運営側の体制整備は今すぐ始める必要がある。
ケアマネ更新制が廃止される理由と、新たに課されるペナルティ
現行制度では、ケアマネジャーは有効期間ごとに更新研修を受講しなければ資格を失う仕組みになっている。この更新制が廃止されることは、表面上は規制緩和のように見える。しかし実態は逆だ。
改正案では、都道府県知事が指定する定期的な研修の受講が、法令上の義務として課される。そして、正当な理由なく研修を受講していないケアマネジャーに対しては、都道府県知事が受講命令を出せる。さらにその命令に従わない場合、1年以内の業務禁止処分を科すことができると法案に明記された。
更新制の廃止は「研修を受けなくてよくなる」ことではなく、「定期的な研修受講を法で義務付け、従わなければ業務禁止にする」という、より実効性の高い仕組みへの転換だ。
現場のケアマネジャーにとっては、更新のたびに課されていた集中的な研修負担が分散される可能性がある。厚生労働省は今後、オンライン受講や分割受講の仕組みづくり、時間数の圧縮を検討するとしており、5年などの一定期間内で分けて受講できる制度設計が構想されている。この点は、研修日程の調整に悩む施設にとって歓迎できる変化だ。
事業者に義務付けられる「研修機会の確保」——具体的に何をすればよいか
施設管理者が今すぐ確認すべき最重要ポイントがここにある。法案の内容によれば、居宅介護支援や介護施設などの事業者は、雇用するケアマネジャーが定期的な研修を受講できる機会を確保する措置を講じることが義務となる。
具体的に想定されている措置は次のようなものだ。
- 未受講のケアマネジャーへの指導・指示
- 研修受講に必要な時間・日程の確保
- 代替勤務の手配や勤務調整
そして義務を怠った事業者に対しては、都道府県知事が勧告を行い、それでも是正されない場合は命令・公表・さらには指定取り消しという段階的な行政処分の対象となり得ることが法案に盛り込まれた。
「更新制がなくなるから管理が楽になる」と安易に考えることはできない。むしろ、各ケアマネジャーの研修受講状況を継続的に把握・管理し、受講機会を制度的に保障する仕組みを事業者側が作る必要がある。就業規則や勤務管理ルールの見直し、研修費用の扱いについての方針策定が急がれる。
有料老人ホームを運営している場合の追加対応
今回の改正でもう一つ見逃せないのが、中重度の要介護者を入居させる有料老人ホームを対象とした登録制度の創設だ。
新たな登録制度では、5年ごとの更新が求められ、登録に際して事業計画書や入居契約の約款などの提出が必要になる。登録簿は一般の閲覧に供されるため、入居者・家族が事業者の情報を確認しやすくなる。施行時期は「公布後3年以内の政令で定める日」とされており、準備期間は限られている。
この登録制度と連動して、「登録施設介護支援」「登録施設介護予防支援」という新たなサービス類型が介護給付・予防給付に追加される。これは、特定施設の指定を受けていない有料老人ホームに入居する要介護者のケアプラン管理を、介護保険制度の枠組みに位置づけるものだ。利用者の自己負担は原則1割、給付額は9割相当が基準とされている。
住宅型有料老人ホームを運営する事業者にとっては、新たな登録手続きへの対応と、登録施設介護支援の仕組みを入居者へ説明する体制の整備が求められる。
今から動くべき優先課題3点
法案はまだ国会審議の段階であり、成立後も詳細は政省令で順次定められる。だが施設経営の現場では、「法律が成立してから動く」では遅い。今この段階で着手しておくべき課題を3点に絞って整理する。
① ケアマネの研修受講状況の棚卸し
まず現在雇用しているケアマネジャー全員の、更新研修・法定研修の受講履歴を一覧化する。施行後に義務となる「研修機会の確保」に備え、今後の研修スケジュールを見据えた勤務管理の見直しを始める。
② 有料老人ホーム運営者は登録制度への対応準備
現在の入居者の要介護度構成を確認し、登録制度の対象となる可能性があるかを確認する。事業計画書や約款の整備状況も早期に点検しておく。
③ 法案の審議動向を継続ウォッチ
今国会での成立を目指すとされているが、国会審議の結果で施行時期は変わりうる。月に1度は厚生労働省や衆議院の情報を確認する習慣をつけておく。
制度改正のたびに事業者の事務負担は増える一方だ。施設運営に関わる法令対応・書類整備・スタッフへの周知——こうした実務を内部だけで回し続けることの限界を感じている管理者も多いのではないか。
出典・参考情報
- 衆議院「閣法 第221回国会 45 社会福祉法等の一部を改正する法律案」(衆議院、確認日:2026年4月7日)
- 「ケアマネ資格の更新制廃止 研修受講は法令上の義務に 政府が閣議決定」(介護ニュースJoint、2026年4月3日、確認日:2026年4月7日)
- 「ケアマネ、研修未受講なら業務禁止も 資格の更新制廃止で法案にペナルティ 政府決定」(介護ニュースJoint、2026年4月6日、確認日:2026年4月7日)
- 「【小濱道博】ついに国会へ 介護保険法改正案が示す制度の未来と現場への影響」(介護ニュースJoint、2026年4月6日、確認日:2026年4月7日)
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