令和8年度診療報酬改定、院長が今月動くべき3つの実務

「薬価改定は4月に終わったから、うちは診療報酬改定の対応は6月まで待っていい」——そう判断している医療機関は、今まさに危険な綱渡りをしている。

令和8年度診療報酬改定の本体施行日は2026年6月1日だ。だが施設基準の届出書類を揃えて受理されるまでのリードタイムを逆算すると、準備のタイムリミットはすでに4〜5月にかかっている。さらに今改定では「賃上げを実施していない施設の入院基本料を減算する」という新規定が設けられた。やるべきことを先送りにすると、加算が取れないどころか減算を食らう可能性がある。


施行は「4月」ではなく「6月」——改定スケジュールの整理

令和8年度の診療報酬改定は、従来と異なる二段階施行になっている。

  • 薬価改定:2026年4月1日施行(すでに適用済み)
  • 診療報酬本体:2026年6月1日施行

本体の施行が6月にずれた理由は「診療報酬改定DX」の実装対応だ。改定内容を電子的に一元配信する仕組みの整備に時間が必要なため、例年の4月施行から2ヵ月後ろ倒しになった。今後は6月施行が定例化する可能性もある。

本体改定率は+3.09%(内訳:賃上げ対応+1.70%、物価対応+0.76%、食費・光熱費対応+0.09%、その他+0.54%)。厚生労働省の説明資料では急性期一般1が1,688点→1,874点(+186点)、特定機能病院A一般7対1が1,822点→2,146点(+324点)と、基本診療料は大幅に引き上げられている。

ただしこれらの点数を実際に算定するには、施設基準の届出が6月1日時点で受理されている必要がある。「6月に施行されるから6月に届け出ればいい」ではなく、5月末までに提出・受理が完了している状態を目標に動かなければならない。


「賃上げ未実施=減算」——ベースアップ評価料の新構造を理解する

今改定でもっとも注意が必要なのが、ベースアップ評価料の大幅な見直しだ。

従来のベースアップ評価料は「賃上げ実施施設が加算を取る」という加点型の仕組みだった。今改定では、賃上げを継続して実施してきた施設と新規実施施設で点数に差がつくだけでなく、一定の条件を満たさない施設は入院基本料の減算対象になる規定が追加されている。

点数の変動幅も大きい。外来・在宅分野では現行の2〜3倍近い点数に引き上げられ、入院分野では2027年6月以降に1点〜500点の500段階設定に移行する設計だ。

また、対象職種が「医事課などの事務職員」にも拡大された。これまでは看護師・リハビリスタッフ等が主な対象だったが、今改定からは医療機関のバックオフィス職員も含めた賃金改善計画の策定・届出が求められる。職員の賃金台帳や昇給実績の整理、改善計画の文書化など、事務量は前回改定より確実に増える。


電子申請の対象が大幅拡大——施設基準届出の実務が変わる

施設基準の届出手続きそのものも変化している。2026年1月から電子申請の対象が113項目から324項目に拡大された。

電子申請対象の拡大は手続きの効率化につながる一方、これまで紙で慣れていた担当者には「どの項目がどのシステムで申請するのか」という混乱が生じやすい。6月施行に合わせて複数の施設基準を一斉に届け出る場合、紙と電子が混在したまま進めると抜け漏れが発生しやすい。

現時点でチームに確認しておきたいのは以下の3点だ。

  • 自院の届出対象項目のうち、電子申請に移行したものはどれか
  • 届出システムへのアクセス権限と担当者が確定しているか
  • レセプトコンピューターのマスタ更新は6月1日に間に合うか

4〜5月が本番——施設基準届出の実務タイムライン

6月1日の施行から逆算すると、実務上のスケジュールは以下のようになる。

  • 4月中:施設基準の棚卸し。現在算定中の項目、新たに算定を検討する項目を一覧化する
  • 5月上旬〜中旬:届出書類の作成・内部確認。賃上げ計画書・職員名簿・勤務実績等の資料を揃える
  • 5月下旬:地方厚生局への提出。電子申請対象はシステム入力、その他は紙で提出
  • 6月1日:新点数での算定開始(受理が完了している施設基準のみ)

特に規模の大きな医療機関や複数の施設基準を同時に届け出る場合、書類の作成だけで2〜3週間かかることも珍しくない。「5月に入ってから動き始める」では遅い可能性がある。

また今回から必要になった「事務職員を含む賃金改善計画書」は、医療事務・経理・総務を管轄する部門との連携が不可欠だ。現場の医師・看護師だけで届出を完結できるものではなくなってきている。


今月の判断を、6月の収益が決める

ベースアップ評価料の加算漏れ1件あたりの試算ではなく、全体で見たときの影響は小さくない。外来・在宅系の評価料が現行比2〜3倍に拡充される中、届出が間に合わなかった施設は6月以降も旧点数での算定を強いられる。逆に、賃上げ継続施設として正しく届け出た施設は、同じ診療をしながら相対的に収益が上がる。

処遇改善と施設基準届出を自院スタッフだけで回すには限界があると感じている場合、外部の専門サポートを活用することが現実的な選択肢になる。届出書類の整理・確認・提出代行、賃金改善計画の文書化支援、給与計算システムの見直しは、いずれも今月中に手を打てるかどうかで6月の数字が変わってくる。


出典・参考情報

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