保育士等処遇改善等加算(区分I〜III)計画届ガイド——令和8年度の変更点と申請漏れを防ぐポイント

「今年も計画届の季節か…」と思いながら、毎年よくわからないまま提出している——保育所や認定こども園の管理者・事務担当者の方から、そんな声をよく聞きます。

処遇改善等加算は、施設が受け取れる公定価格の中でも職員の処遇に直結する加算です。区分I〜IIIの3種類があり、区分IIとIIIについては毎年「計画届」の提出が加算受給の前提条件になっています。しかし令和8年度(2026年度)は、区分IIIに新たな研修修了要件が加わり、これまでと同じ対応では加算を受け取れなくなるケースが生じています。

令和8年度は特に、加算IIIへの研修修了要件の本格適用があり、昨年度と同じ運用では算定額が減る可能性があります。


処遇改善等加算は「3種類」——区分I・II・IIIの違い

処遇改善等加算は、施設型給付費(認可保育所・認定こども園・地域型保育等への公定価格)の中に含まれる加算です。職員の賃金改善に充てることが義務付けられており、用途外使用は返還の対象になります。

区分I:全職員の平均経験年数に連動

施設に在籍する全保育士・保育補助者等の平均経験年数に応じた加算率が公定価格に上乗せされます。勤続年数が長いほど施設全体の加算率が上がる仕組みで、計画届の提出は不要。月次の給付費に自動的に含まれます。

離職率が高く経験年数の蓄積が難しい施設では、この区分Iの加算率が低くなる——つまり「離職が多いと収入も減る」という構造になっています。定着率向上が財務面にも直結する理由の一つです。

区分II:キャリアアップ研修修了者へのポスト別加算

平成29年度に創設された区分IIは、保育現場のキャリアラダーに基づく加算です。対象は以下のポストに就いている職員です:

  • 副主任保育士・専門リーダー:月額40,000円相当の賃金改善
  • 職務分野別リーダー:対応分野1つにつき月額5,000円相当

受給の条件として、保育士等キャリアアップ研修の修了が必要です。対象分野(乳児保育・幼児教育・食育アレルギー・保健衛生・安全管理・障害児保育・マネジメント等8分野)の研修を所定の時間数修了した職員のみが算定対象になります。

計画届では「誰をどのポストに位置づけ、いくら配分するか」を明記するため、対象職員のリストアップと研修修了状況の確認が事前に必要です。

区分III:令和6年度から創設の「恒久加算」

令和5年度まで実施されていた「賃上げ促進臨時特例事業」(月額9,000円相当の臨時加算)は令和5年度末で終了し、令和6年度から処遇改善等加算IIIとして恒久化されました。

区分IIIの特徴は、副主任保育士以外の一般職員を含む幅広い職員を対象とした賃上げ加算である点です。令和6年度当初は一定の移行期間が設けられていましたが、令和8年度からは区分IIと同様にキャリアアップ研修の修了が要件として適用される旨が2026年2月18日付の通知で示されています。

区分 対象 計画届 研修要件
区分I 全職員(平均経験年数ベース) 不要 なし
区分II 副主任・専門リーダー・職務分野別リーダー 必要 キャリアアップ研修修了(必須)
区分III 一般職員含む幅広い職員 必要 令和8年度より研修要件適用開始

令和8年度の注目点——区分IIIの研修修了要件、見落としていませんか

令和8年度(2026年度)の最大の変更点は、処遇改善等加算IIIへの研修修了要件の本格適用です。こども家庭庁から2026年2月18日付で「施設型給付費等に係る処遇改善等加算(区分3)に係る研修修了要件について」が発出され、令和8年度以降の算定条件が明確化されました。

区分IIIで対象とする職員が一定の研修を修了していない場合、その職員分の加算が算定対象外になる可能性があります。具体的な適用範囲・経過措置の詳細は上記通知をご確認ください。

施設が今すぐ確認すべきこと

  • 区分IIIの対象職員が研修を修了しているかを職員ごとに確認
  • 未修了者がいる場合は今年度中の研修受講を計画(都道府県が実施、eラーニング対応のコースもあり)
  • 区分II・IIIを合算した計画届に修了状況を正確に反映させる

「キャリアアップ研修は受けさせているけれど、誰がどの分野を修了しているか管理していない」という施設は、この機会に研修修了の一覧表を整備しておくことを強く推奨します。


計画届の実務——提出前に整理しておく3つのこと

① 対象職員のリストアップと加算区分の確認

区分IIとIIIで「誰が対象か」を改めて整理します。特に、ポスト名と実際の職務内容が一致しているかを確認しましょう。副主任保育士・専門リーダーに任命しているが、実際の職務がそれに対応していない場合、不正受給と見なされるリスクがあります。

② 賃金配分計画の作成

計画届では、加算額をどの職員にどう配分するかを記載します。全額を当該職員の賃金改善に充てることが条件であり、施設の運営費等に流用することは認められません。

配分計画の作成にあたっては「加算額の総額 ÷ 対象職員数」で単純に割り振るのではなく、ポストと職責に応じた合理的な配分根拠を持たせることが重要です。

③ 提出期限の確認と書類準備

計画届の提出期限は市町村によって異なります。多くは4月〜5月中旬を締め切りとしていますが、なかには3月末や4月上旬を締め切りとしている市町村もあります。昨年度の締め切りを参考にするのではなく、令和8年度の期限を管轄市町村窓口に確認することをお勧めします。

提出書類は市町村ごとに様式が異なる場合があります。処遇改善等加算の「計画届」「実績報告書」の2点が主な提出物ですが、研修修了証の写しの提出を求める市町村もあります。


加算を「受け取れているだけ」で終わらせない——人材定着への活用

処遇改善等加算の対象額は、施設の規模・職員構成によって異なりますが、区分II・IIIを合算すると1名あたり年間で数十万円規模の賃金改善が可能になります。これは採用コストや教育投資を考えると、既存職員の定着に充てる方が費用対効果が高い場合が多いです。

キャリアアップ研修の修了を加算の条件と捉えるだけでなく、職員のスキルアップと処遇改善を連動させる人事戦略として位置づけることで、保育士の定着率向上・採用力強化につなげている施設も増えています。

  • 研修修了→ポスト任命→加算受給→賃金アップというキャリアラダーを可視化して職員に示す
  • キャリアアップ研修の受講計画を施設側が年間スケジュールとして管理し、未修了者のフォローをする
  • 加算受給額と配分状況を職員に開示・共有することで信頼関係を構築する

加算制度の複雑さから「とにかく毎年申請できていればいい」と後ろ向きになりがちですが、正しく運用することで施設の財務改善と人材定着を同時に実現できる制度です。令和8年度の計画届は、仕組みを整え直す良い機会と捉えてみてください。


出典・参考情報

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